「基準モニタリング」の
必要性は切迫している
マネジャーには、評価におけるバイアスを防ぐためのプロセスが必要だ。たとえば、パフォーマンスを判断する前に一連の質問に答えたり、一貫性を保つためのチェックリストや基準を使用したりすると、バイアスのかかったフィードバックをすることが少なくなる。
こうした方法の一つとして、筆者らが開発したのが「基準モニタリング」と呼ばれるプロセスだ。どのようなマネジャーでも、自分自身の判断やチームとしての意思決定におけるバイスを排除するために習得し、実践できる3つのステップから成る。
これは、公正な評価プロセスを構築するための研究協力の中で生まれた。我々が協力した企業のマネジャーは、明確なプロセスを段階的に進め、その後、一貫性を確保するために互いをモニターする方法をその場で構築した。
以下で紹介する3つのステップを実践すれば、現在のパンデミックの間、あるいはその後も、バイアスによるネガティブな影響を軽減することができる。
ステップ1:
従業員に関する重要な決定の前に、有効性のある基準を定義する
従業員を評価する基準が曖昧な場合、バイアスのかかった結果につながるが、思慮深く構築され、明確に定義された基準は条件を公平にするのに役立つ。
まず、その役割にとって何が重要なのかを考えることから始めよう。そして、その成功要因を可能な限り、具体的かつ測定可能な言葉で定義する。たとえば「革新的であること」は測定可能ではないが、「アイデアの共有や問題解決を促すフォーラムで、異なる役割や視点を持つ人々をまとめること」は、それが可能だ。
次に、あなたが選んだ基準の中に、意図しない結果を生むものや隠れた好みが含まれていないかを探す。たとえば、「ステップアップ」には、前述した「理想の従業員」に対する思索を欠いた選好がある。
パンデミックで在宅勤務になった何百万もの人々をつなげるオンラインプラットフォームを提供する、シスコシステムズの例を考えてみよう。
同社の従業員の多くは、製品の需要増に対応するために24時間体制で働いていた。たとえ、マネジャーがその間、これまで以上に家族のケアや個人的な問題を抱えていた社員をうまくサポートしたとしても、評価対象がステップアップしたかどうかだけに焦点が当たっていると、そのことを認めてもらえないかもしれない。従業員のケアも顧客の要望の高まりに応えることも、組織全体の健全性にとって価値があり、またそのように評価されるべきだ。
「ビジビリティ(可視性)」という基準は平時でも問題になることが多く、ビデオ会議が普及している中では、後退に拍車をかけかねない。たとえば、子どもを持つ従業員が会議に毎回出席できず、目立たなくなるしかもしれないが、ほかに有意義な貢献をしているかもしれない。
以前から不均衡な負担を強いられている人々のキャリアに及ぼされる、コロナ禍の影響を軽減するには、従来の評価基準をそのまま採用するのではなく、現在の状況下で本当に価値があるものは何か、何に報いたいのかを慎重に検討する必要がある。