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従業員を公平に評価するのは、いつでも難しい。そもそも評価基準が曖昧だったり、評価者個人のバイアスが入り込んだりする。コロナ禍で「理想の労働者」の定義が根本から覆されている、いまの状況ではなおさらだ。そこで、筆者らが提唱するのが「基準モニタリング」だ。業績評価の前にこのプロセスを導入し、評価の一貫性と公平性を担保することは、従業員のウェルビーイングを高めるだけでなく、組織全体を前進させる。そのための3つのステップを紹介する。


 2020年から続く新型コロナウイルス感染症による危機は、女性のキャリアに影響を及ぼしている。業績評価の時期を迎えるにあたって、マネジャーは女性、特に有色人種の女性に対するバイアスが、これ以上の損害を生まないようにする責任がある。

 組織になくてはならない有能な人材を維持し、職場の多様性に永続的な影響を与えないようにしたいのならば、組織の業績評価について再考することが、その助けになる。

 マネジャーはいま、特に厳しい決断を迫られている。危機的状況の中で「リーンアウト」せざるをえなかった従業員を不用意に不利な立場に置くことなく、「ステップアップ」している従業員にどう報いるかを考えなければならない。

 従業員に対する思いやりは非常に重要だが、それだけでは十分ではない。企業は、マネジャーがチームにおける業績の期待を公正に評価するために、有効性のあるツールを用意しなくてはならない。

新型コロナがバイアスを
増大させている

 従業員を公平に評価し、報酬を与える方法を考えるのは、最良の時期でも難しい。現在の危機下で、マネジャーはバイアスを増大させやすく、この問題をさらに困難にする3つの条件に直面している。

 第1に、どのような危機でも、マネジャーが「スロー思考」によって物事を論理的に判断するのは難しく、固定観念に影響されて誤った即断をしがちだ。

 第2に、評価方法の曖昧さがバイアスを増大させる。今日では、新型コロナウイルスのビジネスへの影響を予測することから、リモートワークでのパフォーマンスを判断する能力を再構築すること、あやふやさが増す仕事と私生活との境界を見極めることまで、曖昧さにあふれている。あるマネジャーが言うように、彼らは「個人のニーズに合わせて柔軟に支援する必要性と、ほかの人にも公平である必要性のバランス」を取らなくてはならない。

 第3に、「理想的な労働者」の規範、つまり勤務時間中は家庭の問題は家に置いて仕事に専念できる労働者を暗黙のうちに選好することが多い。そのため、職場の構造が見直されている状況であっても、バイアスが生じる。これは、柔軟性に対するニーズと仕事へのコミットメントは相反するという誤った思い込みに直面している働く母親にとっては、よりいっそう負担になる可能性がある。

 それに比べて、父親は「仕事第一が理想的な従業員である」という従来からの規範によって、子育てに関するニーズがあっても、厳しい目が向けられることが概して少ない。そのためマネジャーは、子どもの家庭学習を手伝ったり家族の看護や介護をしたりしている男性従業員に対しては、それと同じことをしている女性従業員よりも多くの手当を与えようとするかもしれない。