コンサルタントとして、「レガシー・ラガード」の企業を支援するとすれば、どのような助言を送りますか。

「レガシー・ラガード」の企業がこのようなパターンから脱却することは、不可能ではありません。その第一歩は、差別化と、獲得したい顧客層に向けた価値提案を行うことです。

 百貨店を例に考えましょう。私は、百貨店という業態が完全に消滅するとは思っていません。いま百貨店が行っているような編集・キュレーション機能を望む顧客層にとって、そのような品揃えの店舗は価値があります。

 ところが、いま苦境に陥っている大手小売企業の多くは、自分たちがどのような顧客を獲得したいのかを見失っています。すべての人を満足させようとする結果、資源が分散してしまい、結局は誰も満足させられずにいるのです。

 そこで、「レガシー・ラガード」へのコンサルティングで私たちが行うことの一つは、大きな目標を明らかにし、どのような顧客を獲得したいのかをはっきりさせるのを手助けすることです。それが明確になれば、視野が広がり、価値提案をどのように刷新するべきかを考えられるようになります。

 たとえば、製品だけでなく、サービスも販売しよう、という方針になる場合もあるでしょう。あるいは、ほかの企業と手を組むことによりもっと強くなろう、という話になる場合もあるかもしれません。

 いま小売業界は、大掛かりな統合の時代に突入したばかりだと、私は考えています。なかには、破綻して消えていく企業もあるでしょう。けれども、小売は既存勢力が強い世界です。破綻するのではなく、統合の道を選ぶ企業が多いでしょう。

 エコシステムの拡大に待ったをかける要素はあるのでしょうか。

 この問題を適切に理解するために、私がいつも挙げる数字があります。

 アマゾンは2019年から2024年の間に、ほかの世界上位10社の小売企業のどこよりも1000億ドル以上多くの資金を情報テクノロジーに投資する計画です。これほど圧倒的な資金力を持っていて、これまでもイノベーションを成功させてきた歴史を持つ企業を相手に、対等な条件で競争できる企業はありません。この点は小売企業の統合を後押しする要因の一つになります。

 アマゾンには、主に2つの顧客があります。アマゾンで商品を購入する消費者と、アマゾンで商品を販売する企業です。アマゾンが消費者との関係で成功していることは、よく知られている通りです。でも、それだけではありません。2020年には、アマゾンのプラットフォーム上でビジネスを行う企業の数も倍増したのです。

 とはいえ、アマゾンにとって、すべてがバラ色というわけではありません。コロナ禍の下、米国では、約束した通りの時間に商品を配達できない時期がありました。顧客体験が悪化した期間があったのです。目覚ましい成功を収めている企業にとっても、急速な成長を制約する要素はあるのです。


HBR.org原文:What Did 2020 Do to Retail? December 28, 2020.