ほかの職でも通用するスキルを探す
最も手堅い道は、自分の持っているスキルを徹底的に自己分析するというものだ。
多くの人は、みずからが携わっている個別の課題や、特定の業務やスキルに関わる経験については語りやすい。そのため履歴書を書く時、自分が歴任してきた役職を列挙したり、関わってきたプロジェクトを並べたり、活用できるアプリケーションや資格の類いを記入したりする。
しかし、どのような業務を担当しているかを見るだけでは、あなたがいまの仕事をうまくこなせている理由の全容は明らかにならない。
あなたが本当に持っている能力は、どのようなものなのか。あなたは、あるプロジェクトの下に人々を結集して、共通の目標に向けて協働させることが得意なのか。抽象的な問題に対して、具体的な解決策を示すのが得意なのか。厳しい話し合いの進行役を務めて、同僚同士の対立を解決するのが得意なのか。
こうしたスキルの中には、あなたが現在務めている役職と関係しているものもあるかもしれない。しかし、そのスキルを日々活用しているのに、年次成績評価の際には評価されていないケースもあるだろう。
こうした抽象度の高いスキルをリストアップしよう。この作業で見えてきた強みをもっと強化していけばよい。それに、そのスキルを活かすことを考えれば、キャリアで次に進むべき方向が見えてくるかもしれない。
自分が持っている本当のスキルを一通り洗い出すのは、一見すると簡単な作業に思えるかもしれない。だが、実際にやってみると、難しく感じる人が多い。
筆者はテキサス大学オースティン校の教員として、大勢の博士課程の学生と話してきた。アカデミズムの世界に入っていきたいと思っている学生の中には、それまでに自分が身につけたスキルのうち、どのようなスキルがアカデミズムの世界でも有用かを明確に認識できていない人も多い。
同じように、退役軍人の支援活動を行っている人たちによれば、元兵士が民間の仕事に就こうとする時、軍でやってきたことを就職活動のセールスポイントに言い換えることに苦労する人が少なくないという。
自分が持っているスキルを知ることができれば、それらのスキルが通用する業種を探し、就職説明会などのキャリア関連のイベントに参加したり、そうした業種の企業の採用担当者とやり取りしたりしてもよいだろう。異業種で自分にふさわしいのがどのような職種なのかを調べ、その業種でその職種を表現するために用いられている業界用語を学ぼう。
採用選考を生き延びるためには、新しいアプリケーションの使い方を習得したり、新しい業務プロセスを学んだりする必要がある場合もあるだろう。それでも、みずからが持っているスキルを認識することにより、自分を価値ある候補者として企業に売り込んで、面接までこぎつけやすくなるだろう。