大局的な質問をする

 念のため、誤解のないように確認しておくが、人々が答えに詰まるような鋭い質問をすべきだと言っているのではない。「どうすれば生産性を10%上げられるか」あるいは「この点で何か見落としているのではないか」などと問い詰めてはいけない。

 リーダーが投げかけるべきは、組織がまだ特定していない大きな機会をともに探求することを促すような質問である。以下にその例をいくつか挙げよう。

・これまで提供してきた以上に大きな価値を創出できるような、大変化をもたらす機会は何だろうか。
・顧客が最近気づき始めたもののまだ満たされていないニーズのうち、新規事業の土台となりそうなニーズは何だろうか。
・顧客の多様なニーズに対応するため、外部のリソースをどう活用すればよいか。
・標準化されたマスマーケット向けのプロダクトやサービスから、顧客の個別ニーズに応じてパーソナライズ化されたプロダクトやサービスへ移行するにはどうすべきか。
・生産やロジスティクスにおける不測の事態に対応するため、どうすれば供給ネットワークをいっそう柔軟性のあるものに発展できるか。
・どうすればセンサーテクノロジーを活用して、自社プロダクトの利用方法に関する認知度を高め、その情報を用いてより高い価値を提供し、顧客との信頼関係を深められるか。

 組織ですでに行われている活動について尋ねるのではなく、ここに挙げたような新しい大きな機会に関する質問に焦点を当てることは、あなたの恐怖心をも払拭してくれるはずだ。質問をすることで自分の弱さを露呈したとは見られたくない場合でも、前述したような質問であれば、あなたが答えを知らなくて当然だと皆が思うだろう。

 また、このような大局的な質問を通じて、あなたには大志があること、組織をいまよりさらなる高みへ導きたいと思っていることを伝えられる。

 加えて、質問の背後にある長期トレンドに関するエビデンスを提示することで、自分に対する信頼感を高めることができる。たとえば、新たな機会をもたらす可能性のある新興テクノロジーや、まだ満たされていない顧客のニーズを掘り起こすようなデモグラフィック(人口動態)の移行である。