「それ見たことか」と指摘されて嬉しい人はいないだろうが、自動車メーカーは半導体不足にもっと備えておけたはずだ。しかし実際には、お粗末な判断をしてしまった企業が多かった。

 たとえば、リーン生産システムを採用し、部品の在庫を徹底して減らした結果、脆弱性を抱え込んだメーカーも少なくない。

 2020年第3四半期に自動車の売上げが回復した時、自動車メーカーは半導体の発注を増やすのが遅く、もっと機敏に行動したエレクトロニクスメーカーに後れを取ってしまった。エレクトロニクスメーカーは、自動車メーカーより広い視野で物事を見ていたうえに、半導体メーカーと長期的な関係も築けていたので、適切な計画を立てて、2020年11月以前に半導体の供給ラインを確保できたのだ。

 これとは別に、いま自動車業界では、もう一つの極めて重要な市場の変化も進行している。この変化もサプライチェーンに大きな影響を及ぼす。

 電気自動車への移行が進むにつれて、自動車は電子機器という性格を強めている。その結果、自動車産業は、ほかのあらゆる産業と半導体を奪い合う関係になった。その競争相手の中には、エレクトロニクス産業や、ネット接続機能を備えた製品を販売する産業すべてが含まれる。

 いま半導体不足で困っている自動車メーカーやその他の産業の大手メーカーは、自社のサプライチェーン戦略をじっくり見直して、以下の問いをみずからに問うべきだ。

 コスト削減を優先させるあまり、リスクマネジメントを犠牲にしている領域はないか。サプライチェーンによく目を光らせ、地理的状況を頭に入れていれば、有力部品メーカーの工場で火災が起きた時、すぐにサプライチェーンを変更できたのではないか。次に火災や感染症の流行で重要な部品の供給が止まる時に備えるためには、原材料メーカーとの関係をどのように修正すればよいのか。

 コロナ禍と半導体不足により、くっきりと浮き彫りになったことが一つある。変化に対処し、レジリエンス(再起力)を持ち続けるためには、柔軟で機敏に動けるサプライチェーンが欠かせないということだ。


HBR.org原文:Why We're in the Midst of a Global Semiconductor Shortage, February 26, 2021.