今後はハイブリッド型組織が主流になる

 フューチャー・フォーラムが実施した主要6カ国の知識労働者に関する調査によると、大半の人々が柔軟な働き方を重視している。

 完全なリモートを望む人は16%にとどまり、週5日のオフィス勤務に戻りたい人は12%のみ。大多数の72%が、リモートとオフィスのハイブリッド型勤務という選択肢を望んでいる。通勤を避けたい、よりよいワークライフバランスが欲しいという思いが強いのだ。

 企業にとってのハイブリッド型のメリットも明らかになってきた。より広範な人材プールからの採用、不動産関連コストの削減、そして一般的にオペレーションの効率化が可能になる。

 オフィス中心の文化には二度と戻らない可能性を公言している有名企業も多い。求人サイトのフレックスジョブズによれば、ドイツ銀行、インフォシス、ネーションワイド保険、ニールセン、シーメンス、スターバックス、ツイッターを含む多くの企業が、従業員に部分的または完全な在宅勤務の選択肢を恒久的に与える方向で動いている。

 リーダーはいま、オフィス環境をどう再開したいのかを考え始める必要がある。文化を新たに、よりよい形で強化するためにオフィスをどのように再考できるだろうか。さらに重要な点として、出社組と在宅組の両方に文化を均等に普及させるには、どうすればよいのか。ハイブリッド型勤務に伴う最大のリスクの一つは、従業員間で企業文化への理解が異なり、相いれない可能性である。

 これは多くの場合、インクルージョンの促進と、文化の伝達および強化をリモートワーカーに対してしっかり行うことに帰結する。

 情報伝達の手段と場所に関する慣行を変えることが、インクルージョンの徹底につながるかもしれない。たとえば、近況報告は非同期的にして動画を用いるほうが、リアルタイムで全員参加するよりも効果的かもしれない。あるいは会議の規範として、所在地に関係なく全参加者につなぐことで条件を平等にする必要性なども考えられる。

 インクルーシブな文化の促進に注力する企業にとって、在宅勤務での柔軟性をより多く提供することは大きなメリットがある。フューチャー・フォーラムの独自調査によると、リモートワーク環境における組織への帰属意識は、黒人、ヒスパニック系、アジア系米国人の従業員は実際に平均よりも高く、一方で白人従業員は最も低かった。

 とはいえ組織は、非同期的なコミュニケーションのみに頼ることで生じる、文化の希薄化を懸念すべきである。ギットラボやオートマティックのような完全リモートの企業でさえ、社員間の絆の結び直しと新メンバーとの交流のために、時折は対面式の集会に頼っている。

 組織に間違いなく必要となるのは、効率的でインクルーシブな関わり合いを可能にする慣行を複数取り混ぜながらも、文化を強化する同期的かつ対面型の活動要素を維持しておくことだ。

 この数カ月間に筆者らがインタビューしたほぼすべての企業幹部は、新たな未知の時代が始まったことを心得ている。リモートファーストの文化を促進すると同時に、文化の強化に向けてオフィスの象徴と協働の価値を維持する方法を見出すには、早期の実験が必要だ。進むべき道を見つけるためには、その過程で失敗への寛容さも不可欠となる。

 新しい働き方の時代に成功できるか否かは、強い文化を築いて維持するための新たな手段を受け入れる姿勢にかかっていることを、リーダーは認識しなければならない。


HBR.org原文:WFH Doesn’t Have to Dilute Your Corporate Culture, February 01, 2021.