
職場の不正行為は、なぜなくならないのか。コンプライアンスに基づく研修や監査を実施する企業は多い。にもかかわらず、組織内の不正を目にした従業員が声を上げるケースはごくわずかだ。不祥事が明るみになれば、企業が被る損失ははかり知れない。既存の研修や行動規範に頼らず、従業員が不正を告発しやすい仕組みを整えるべきだ。本稿では、それを実践するための7つの行動を提案する。
「傍観者効果」という言葉が生まれてから50年以上が経過したいまでも、多くの人は職場で不正行為を目撃しても頑なに沈黙を守っている。
従業員が声を上げるのを促す手段として、多くの企業はいまだに行動規範や研修、監査など、コンプライアンスに基づく従来のツールに頼っている。しかし、それらは機能しておらず、内部告発をする従業員は推定でわずか1.4%だ。既存の方法は効果がなく、しばしば逆効果になっている。
これが問題なのは、組織の沈黙がホワイトカラー犯罪を永続させるからだ。企業が不正行為防止のために多額の投資をしているにもかかわらず、ホワイトカラー犯罪は増え続けている。不祥事によって市場評価は下がり、ボーイング、BP、ベアリングスなど多くの企業が評判を落としている。
沈黙の最大の原因は、報復に対する恐れだ。ある調査によると、内部告発者の82%がハラスメントを受け、60%が失職し、17%が住居を失い、10%が自殺を図っている。その他の沈黙の原因には、無意識の帰属意識、現状維持を好む傾向、故意の盲目などが挙げられる。
組織は、従業員が声を上げるよう促し、彼らに効果的に対応するにはどうすればいいのか。この難問を調査するため、筆者はランダム化比較実験を行い、従業員923人に対してさまざまなメッセージをテストした。その結果、既存の戦略を見直すには、行動科学に根ざした混合型のソリューションが必要であることがわかった。