前編に引き続き、2021年1月にアクセンチュアが実施したDXサーベイの結果を基に、日本企業のDXの問題点を探っていく。今回のテーマは、事業規模別に見たDXの課題と進め方である。置かれた環境やリソースの異なる大企業と中堅企業とでは、DXの進め方もおのずと違ってくる。コンサルティングファームとバイアウトファンド、それぞれの視点から限られたリソースで変革を実現するためのポイントを語る。

DXによる中堅企業の可能性

――前編は、日本企業でDXが進まない理由として、導入への目的意識のあいまいさから、現状のオペレーションやシステムを維持したまま部分的なデジタル化に終始してしまうという大企業の傾向に注目しました。その観点でいうと、良くも悪くも目的が比較的明確化しやすい中堅企業の方がDXを推進しやすいという見方はできませんか。

上野 確かに部門の壁を越えた合意形成や承認プロセスに時間がかかる大企業に比べて、中堅企業には新しいチャレンジに向けた機動性があります。実際に、バックオフィスのデジタル化やセキュリティに関しては、中堅企業でも一定程度は進んでいます。ただ、大企業に比べると、コストや人材といった面で制約があるのは否めず(図表1)、DXを推進する上で中堅企業が有利だとは一概に言えないと考えます。

喜多 私たちの実感としても、日本の中堅企業のDXへの関心は低くないのですが、やはり予算や人材の不足が課題となっています。しかし、中堅企業には、レガシーなシステムを抱えた大企業より、クラウドへの転換などは容易で、既存のシステムからの脱却も決断がしやすいという利点もあります。デジタルによって、大手企業がさらに強くなるのか、あるいは中堅企業が機動力を持ってDXに取り組むことで業界構造を大きく変化させ得るのか、というのは戦略論的に面白い議論です。

上野 リソースが限られた中堅企業でも、バイアウトファンドのようなガバナンス構築にたけた外部の力を活用すれば、一気に組織やオペレーションを変えることも可能なはずです。

喜多 われわれバイアウトファンドとしては、中堅企業に対して、DXで大企業に後れを取らないように支援するだけでなく、業界の構造を変化させ、ゲームチェンジを実現する企業の創出を目指しています。そのためには、資金面だけにとどまらず、人材や技術、ネットワークといった外部のリソースとその企業を効果的につなぐといった点でのサポートも重要だと考えています。

 投資テーマとして何らかの形でDXが含まれた案件が増えていますので、われわれにもノウハウが蓄積されているところです。こうしたリソースやノウハウを、さらに中堅企業にも活用してもらえれば、既存のポジションや力関係を打ち破る手助けになるのではないかと思っています。