問題の所在を認める

 筆者が話を聞いた従業員たちが最もよく口にしたのは、リーダーが沈黙を守っていることに対する驚きや、CEOしか声を上げなかったことへの落胆だった。その沈黙は何を意味するのかと、彼らは考えあぐねていた。

 地位の上下を問わず、すべてのリーダーが、アジア系米国人に対する差別とヘイトクライムは絶対に許されないこと、そしてAAPIコミュニティの味方であることを、明確かつ断固たるメッセージとして発信すべきだ。黙っていたり、メッセージを薄めたり、ダイバーシティ室に任せきりにしてはダメだ。

 多くの従業員は、ハブスポットがインスタグラムに投稿した、決然たるメッセージに好感を示した。「私たちはアジア・太平洋諸島系コミュニティと一致団結している。いままでもそうだった。これからもずっとそうだ。以上。#StopAAPIHate」

 ある有名大学のヒスパニック系職員は、アトランタ銃撃事件後に、大学総長はメッセージを発信したが、学部長は何も言わなかったことに衝撃を受けたと言う。その学部は、アジア系学生が多かったにもかかわらず、だ。この職員は、別の理由のためにその大学を辞めたが、学部長の沈黙は、その組織の人種に対する態度全般を示唆していると思ったと言う。

 あるバイオテクノロジー企業に勤めるアジア系米国人は、ダイバーシティ室からメールが1通送られてきたが、経営幹部や彼自身が知る管理職の署名がないことに落胆したという。「見知らぬ人が手を差し伸べてくれたり、サポートしてくれたりするのは嬉しいが、見知らぬ人だけではないことを祈る」と、彼は言う。

 また、アジア系に対するヘイトクライムについては何も言わないが、性的少数者をサポートするステッカーをつけていたり、メールの署名に「BLMを支持しよう」と書き添えたりしているマネジャーは少なくなく、彼らの社会的正義に対する本気度に疑問を感じると語っていた。

いつでも話を聞く

 サポートは多くの形を取りうる。マネジャーであるあなたのドアはいつも開いていると部下たちに知らせたり、少し休んで気持ちの整理をする時間を与えたり、一人になる余地を与えてやったりするなど、いろいろだ。

 そもそも、部下によって感じ方は違うだろう。あるアジア系の病理学者は、勤め先で、自分の気持ちを話していいと言われたら、居心地が悪いだろうと言っていた。あるプログラマーは、話し合いをするなら、直属の上司と話したいと言っていた。

 このように幅広いニーズを満たすためには、チームの全員に、利用可能なリソースと、あなたがいつでも話を聞くと伝えることだ。そうすれば、サポートが必要なスタッフが、みずからディスカッションを持ちかけることができる。これは、部下の人種によって気持ちを推測したり、象徴的に扱ったりすることを回避できる。

 実際には、誰がAAPIとつながりがあり、苦しんでいるかは、さほど自明ではないかもしれない。自分はAAPI系ではないが、配偶者がAAPI系だという人もいる。ヘイトクライムは、ターゲットとなるコミュニティ全体に影響を与えるのだ。