ツイッチ
2011年に創設され、2014年にアマゾンに買収されたツイッチは当初、ゲーマーがゲームプレーのライブ配信を通じて収益化とフォロワー集めができるプラットフォームとして人気となった。
コロナ禍が始まって以降に総利用者数が急増し、特に音楽、美容、フィットネスや料理といった、ゲームとはまったく関係ない分野での利用が増えた。月間700万人以上のユニーククリエイターが配信し、1日3000万人以上の訪問者が、各セッションに平均29分間滞在している。
ツイッチユーザーの大半はまさにZ世代に当てはまり、21%が13~17歳、ほぼ半分が18~34歳で占められている。南北米大陸の販売担当ヘッドを務めるサラ・イオースによれば、ユーザーは1日に3回以上再訪問して消費と交流をすることも少なくないという。
コロナ禍の初期、ツイッチでのDJのライブ配信が共通体験のキャンプファイアとして大人気となったことはよく知られているが、同プラットフォームはマイクロコミュニティにもつながりの場を提供している。
ブランドがツイッチのユーザーにリーチするには、アマゾンの広告プラットフォームを使った動画とディスプレイ広告を利用する方法や、ツイッチのブランド・パートナーシップ・スタジオと組んで、より独自性の強い広告と体験を創出する方法などがある。
ツイッチで最も成功するブランドは、「その場にいるユーザーに合わせている」とイオースは言う。つまり、このプラットフォームの「風変りでユーモラスな雰囲気と性質を持つコンテンツ」に見合っているのだ。
その例として、トイレットペーパーブランドのシャーミンは2020年7月、『デュース・デストロイヤー』というゲームを生み出した。ユーザーは次々に飛んでくるうんちを撃ち落とすという、『ダックハント』と『スペースインベーダー』を組み合わせたような体験をする。最高得点の獲得者には、配信者を支援するためのツイッチの仮想アイテムである「ビッツ」が与えられた。
ピザハットは2020年末、「フライデーナイト・バイツ」シリーズを数週間にわたりツイッチと開催した。プロゲーマーとインフルエンサーが参加してゲームで対戦し、ピザをテーマにしたチャレンジでも競うイベントだ。
「当社が目指したのは、貴重なつながりを生む豊かなゲーム体験を創出し、ゲームをする最高の一時はピザハットのピザとともに訪れると証明することです」と、ピザハットのメディア担当ヘッドを務めるカリー・コワルスキーは説明する。
「これを踏まえて当社がツイッチを選んだ理由は、ゲームとライフスタイルの分野にまたがってコンテンツを消費するZ世代とミレニアル世代の存在が圧倒的に大きいからです」。各エピソードは100万人以上の同時視聴者を獲得し、合計視聴数540万、視聴分数は2600分以上となった。
ティックトック
Z世代の熱狂的なフォロワーたちを擁するプラットフォームといえば、ティックトック(TikTok)について触れないわけにはいかない。米国だけで1億人の月間アクティブユーザーがいるティックトックには、考えられる限りのあらゆる興味関心、活動、トレンドを反映したニッチなサブカルチャーが無数に存在する。
いずれかのコミュニティのコンテンツにユーザーが好みを示すと、ティックトックのアルゴリズムは同類のコンテンツをさらに表示する。結果的に、このプラットフォームはマイクロコミュニティのキャンプファイアを大量に擁する傘として機能している。
同社のマネージングディレクターでビジネスマーケティング部門のグローバルヘッドを務めるケイティ・リッチオ・ピュリスによれば、ティックトックの急成長はZ世代に後押しされ、この層は特に過去1年間で劇的に増えたという。ロックダウンの期間中にはもっと年長のユーザーも引き付けたが、ティックトックの大部分を占めてトレンドを牽引するのはZ世代であり、「今後も当社のあり方を決定づけていく」とピュリスは言う。
ブランドを統合するコンテンツとそうでないコンテンツの境界を曖昧にした最初のプラットフォームとしてはインスタグラムなどがあるが、ティックトックはこの傾向をさらに推し進めてきた。このプラットフォームにあるブランドコンテンツは、一般ユーザーが作成したものと見分けがつかない場合も多い。
たとえば、ブランドが仕掛けるハッシュタグチャレンジ(ユーザーに特定のハッシュタグを用いた投稿を促す広告キャンペーン)の一部は、ティックトックで最も多く閲覧されたコンテンツとなっている。実質的にユーザーが生成した広告といえるものが続々と生まれているが、その中には通常ならば若いユーザーには訴求しないブランドまでも含まれる。
その好例として、コロナ禍のさなか、創業150年のマットレスブランドであるシモンズは#snoozzzapaloozaというハッシュタグチャレンジを始めた。ベッドをステージに見立てて「ステージダイブ」するようユーザーを促す企画だ。このハッシュタグで100万人以上が動画を作成し、60億回以上も閲覧され、シモンズのウェブサイトへのトラフィックは104%増加した。
ユーザーはティックトック側が必ずしも期待していなかった形でブランドを歓迎し、この傾向も主にZ世代が牽引しているとピュリスは言う。「当社が生み出したこの場所では、人々はとても歓迎的です。このためブランドに対しても、同じように歓迎するオープンな雰囲気ができたのでしょう」。結果的に、「ティックトックのコミュニティはマーケターを強く引き付けています」
おそらく最も印象的な例は、ネイサン・「ドッグフェイス」・アポダカが投稿し驚異的に拡散したティックトック動画だろう。アイダホ州に住むこの男性が、スケートボードに乗りながらオーシャンスプレーのクランベリージュースを飲む動画は、昨年(2020年)に大量のモノマネ動画を生み出した。
ティックトックは広告主に対して非常に好意的で、ブランドへのさまざまなサポートを提供している。セルフサービス型のプロダクトとしては、ブランドがティックトックのクリエイターを検索してつながることができるクリエイター・マーケットプレイスなどがある。また同社のクリエイティブ・ラボのチームは、ブランドによる大規模キャンペーンに向けた広告クリエイティブの制作を支援する。
しかしピュリスによれば、型にはまりすぎることを避けるのがティックトックのやり方であり、インフルエンサーとの連携では特にそうだという。「定まった手法というものはありません。時には、この上なくシンプルでオリジナルな、5秒間の動画が大きな変化を生むこともあります」
昨年の記事で書いたように、デジタルキャンプファイアのプラットフォームでZ世代に共感を呼ぶ形でリーチするのは簡単ではない。特にこの層は、いくつものデジタルキャンプファイアに細分化されているため、なおさら難しい。
しかし、ブランドにとって、SNSでの存在感の確立が必須となったように、デジタルキャンプファイアのプラットフォームでユーザーを引き付けることも不可欠となっている。これらの場で、クリエイティブな方法で実験をする意欲のあるブランドは、この先何年も見返りを生む関係性を築く大きなチャンスがある。
すぐにでも対応すべき
デジタルキャンプファイア
それ以外にも、以下のようなZ世代がつながりを築いている場所がある。一般的に、より長く存在しているプラットフォームほどブランドに対して好意的な傾向があるが、それは競争率が高いという意味でもある。より新しいプラットフォームは、比較的低いリスクで実験的なコラボレーションを行う場としてふさわしく、Z世代の動向を観察するのに適している。
●スナップチャット
スナップチャットは2011年の創設だが、当たり年となったのは2020年だ。2021年2月の発表によれば、1日のアクティブユーザーは2億6500万人に達し、Z世代の間で広がり続けている。米国では13~24歳の90%以上にリーチして、主にプライベートなメッセージのやり取りに利用されている。
スナップチャットは大小の広告主に対して非常に歓迎的だ。カメラをさまざまにクリエイティブな形で活用した広告を通じて、ブランドがこの場で存在をアピールできるよう、数々の方法を提供している(例:対面型の買い物をしたくない消費者のための、拡張現実を利用した試着体験など)。
●ピンタレスト
ピンタレストは2010年からあるが、2020年に月間アクティブユーザーは4億5900万人に達し、Z世代とミレニアル世代が最近の成長を牽引している。このマイクロコミュニティのプラットフォームはブランドに極めて好意的だ。広告主に数々の統合オプション(動画を重視するものが多い)と、ピンタレスト内でパフォーマンスを最適化する一連のツールを提供している。
●VSCO
2011年に創設されたVSCO(ビスコ)は、写真加工ツールだがマイクロコミュニティのキャンプファイアでもあり、毎日800万枚の写真と動画が投稿されている。同社の発表によれば、ユーザーの75%は25歳以下で80%が米国外にいる。ビジュアルによるストーリーテリングを重視したブランド連携を支援している。
●IMVU
2004年に創設された3DのチャットプラットフォームであるIMVUは、アバターで交流するネットワークとしてはオンライン最大を誇る。月間アクティブユーザーは700万人、うち54%が世界各地の18~24歳だ。
この共通体験のキャンプファイアは、従来型のディスプレイ広告やバナー広告を超えたブランド連携に関しては、まだ未成熟である。とはいえ2021年には、ファッションショーや、映画・テレビの新作の場面を再現したバーチャルルームといったブランド体験の実験が進んでおり、変化がありそうだ。
●アマング・アス
アマング・アスは2018年に生まれたばかりだが、2020年12月だけでプレーヤーは5億人に上った。共通体験のキャンプファイアであるこのゲームは、昨年にはWWEなどのブランドと連携してイベントを行い(「スーパースター・ゲーミングシリーズ」の一環としてゲームプレイをライブ配信)、コロナ禍の期間にZ世代の間で誰もが知る存在となった。