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Z世代と称される若年層のユーザーの多くは、フェイスブックやツイッターなど誰でも参加できるSNSから距離を置き始め、より閉鎖性の高いプラットフォームで熱狂的なコミュニティを構築している。筆者はその場を「デジタルキャンプファイア」と呼んだ。Z世代は主にデジタルキャンプファイアで文化を体験・形成するので、企業のマーケターはこの存在を無視することはできない。本稿では、フォートナイト、ロブロックス、ディスコードなどの主要なデジタルキャンプファイアを紹介するとともに、自社のブランドが存在感を示す方法を示す。


 若年層のユーザーが多くの公開型ソーシャルプラットフォームを離れ、より小規模で親密度の高いオンラインの居場所へと押し寄せている現象について、筆者は2020年2月の寄稿で述べた

 そして、「デジタルキャンプファイア」と呼べるこのような場にユーザーが集まる理由を3つ特定した。プライベートなメッセージをやり取りするため、マイクロコミュニティにつながるため、そして共通体験に参加するためである。

 コロナ禍が始まって以降、デジタルキャンプファイアのプラットフォームは爆発的に成長し、特にZ世代のユーザーの間で顕著に広がった。この世代はおおよその定義として1997年以降生まれ、または現在9~24歳の人々だ。

 実際、2020年に若いユーザーの注目を引き付けた最も大規模な文化的事象は、従来型のSNSではなくデジタルキャンプファイアのプラットフォームで生じた。

・ヒップホップアーティストのトラビス・スコットは4月、ゲーム『フォートナイト』の中で全5回のコンサートツアーを行い、2700万人以上のプレーヤーが参加した。

・ラッパーのリル・ナズ・Xは11月、ゲームプラットフォームのロブロックス(Roblox)で2日間のコンサートを行い、3300万以上の視聴数を獲得した

・アレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員(ニューヨーク州民主党)は、ツイッチ(Twitch)でゲーム『アマング・アス』(Among Us)のプレー実況をライブ配信し、40万人以上のユーザーが視聴した。

 ゲーム、またはゲーマーの集まる場としてつくられたプラットフォームがデジタルキャンプファイアとなっているケースが多いが、これは偶然ではない。ゲームは近年、より幅広いカルチャーに波及している。今日、「ゲーミング」とは単に「ゲーマー」だけが使う言葉ではなく、オンラインにおける交流の新たな枠組みとなっているのだ。

 この1年の間にデジタルキャンプファイアは、Z世代のユーザーがどうつながりを築くのかだけでなく、カルチャー全般をどう体験し形成するのかをも決定付ける要因となっている。したがってマーケターは、もはやこれらを無視しているわけにはいかない。

 とはいえ、デジタルキャンプファイアをうまく使いこなす方法を見つけるのは大変かもしれない。

 これらの多くは比較的新しく、従来型のソーシャルプラットフォームとは行動原則が異なる。ブランドと統合する際のサポートに関しては、洗練度と準備態勢はまちまちだ。ユーザーの共感を呼ぶブランドコンテンツやブランド体験のつくり方について、明確なルールがプラットフォーム側に存在しない場合も多い。

 これらのプラットフォームの仕組みを理解する一助として、Z世代が集まる主要なデジタルキャンプファイアについて以下で説明し、ブランドがこれらの場で存在感を示すためのクリエイティブな方法を例示していく。