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企業がマインドフルネスを活用することの効果は、さまざまな研究が証明している。しかし、それが恩恵ばかりをもたらすとは限らない。たとえば接客業のように、自分の本当の気持ちを偽ってでも笑顔を取り繕うことが求められる職種の場合、抑え込んでいた不快な感情を認識するきっかけにもなり、仕事の満足度や業績が低下する要因にもなりうる。本稿では、自社でマインドフルネスを導入する際に、その効果を最大化するための4つの留意点を示す。


 ここ数十年間で、マインドフルネスはすっかり主流になった。マインドフルネスとは、その瞬間に完全にそこにいることを意味し、一連の広範にわたる行動を通して改善できるという特性を持ち、自分の肉体的、感情的な状態に対していますぐ、より意識的に集中しやすくなる。

 マインドフルネスの実践するための瞑想や呼吸法といったテクニックは、ストレスや不安の軽減から禁煙、減量、対立の解消に至るまで、さまざまな事柄に利用できる。今日の人気ぶりは、大企業の半数以上が何らかの形でマインドフルネス研修を従業員に提供していることからも明らかだ。

 この人気には正当な理由もある。よくある経営論の一時的流行とは異なり、マインドフルネスには多くの科学的証拠の裏付けがあるのだ。マインドフルネスの研修プログラムを通して、私たちはその瞬間により集中し、考え、感じ、行動できるようになり、さらには長期的なウェルビーイングや態度、人間関係、業績にも好影響を及ぼすことが、研究から明らかになっている。

 ところが、このような恩恵がある一方で、マインドフルネスは状況によって悪い方向に作用することが、筆者らの最近の研究で明らかになった。具体的に興味を持ったのは、カスタマーサービスを提供する実際の職場環境(従来の研究の多くは研究室やセラピストのオフィス内で行われてきた)で、マインドフルネスが業績に及ぼす影響の詳細を知ることだった。

 サービス関連の職務はしばしば、かなりのストレスを伴うことで知られ、できる限りポジティブな職場環境を整えることは雇用者の責任である。とはいえ、そのようなストレスの多い立場にある従業員のメンタルヘルスを改善する方法を見つけられれば、得るものは多いだろう。

 そこで筆者らは、銀行や医療、金融、セールス、コンサルティングなどの業界でさまざまな職務に就く1700人近くの従業員を調査した。調査参加者が仕事を注意深く進める傾向にあるか、急いで進める傾向にあるか、そして衝動にかられたり、注意散漫になったりするのをどの程度防げるかに焦点を当てた質問で、参加者のマインドフルネスとセルフコントロール(自制)を評価した。

 筆者らはまた、職場で感情を偽った頻度についても尋ねた。感情を偽るという不快な経験のせいで、マインドフルネスから得られる恩恵は限定的なものになる、という仮説を立てていたためだ。

 その後、調査参加者の上司たちに、それぞれの業績を独自に評価するように頼んだ。その結果、偽りの感情を頻繁に見せる必要がある仕事をしている従業員にとって、より高いレベルのマインドフルネスは一貫して、自制や全体的な業績を下げる原因になっていることがわかった。