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バーチャル環境で働くことには慣れてきても、ビデオ会議には満足できず、出席するたびに疲労するのは無理もない。そもそも、対面のコミュニケーションに代わるプラットフォームとしては設計されていないため、音質に大きな問題があり、自然な会話が妨げられているからだ。そこで筆者が注目するのが、ビデオゲームや音楽の世界で広く使われている音響技術である。本稿では、既存のプラットフォームではなぜ自然な会話が難しいかを技術面から論じ、音響技術がビデオ会議の音質という問題を改善させる可能性を提示する。


 果てしなく続くバーチャル会議というニューノーマルが、社会規範を急速に変え、私たちをつなげるテクノロジーに対する新たな興味をかき立てている。

 ビデオ会議のプラットフォームそのものは何年も前からあるものの、そもそも対面でのコミュニケーションに取って代わる目的では設計されていなかった。

「ズーム疲れ」に耐えながら1年間を過ごした現在、どのような機能や特徴があればユーザーがつながりを実感できるか、またそうした機能や特徴をどうすれば改善できるか、新たな視点から検討すべき時期に来ているといえるだろう。

 重要な検討項目の一つが音質だ。事実、会話に参加している人全員に聞こえることが、対面でのコミュニケーションの最も重要な特徴だといえるだろう。

 よい音質は会話の中の言葉を理解しやすくするうえ、声の抑揚から気分を読み取ったり、周囲の音を拾ったりすることを可能にする。

 逆に音質が悪いと、私たちはフラストレーションを感じる。バーチャルハッピーアワーやチーム会議、コラボレーションのためのセッションなど、2人以上が参加するビデオチャットでは、誰かが同時に話すと必ず互いの音が打ち消される。

 現在、最も利用されているビデオチャットのプラットフォームでは、人々が矢継ぎ早に話す会話には対応できないのだ。

 しかし、在宅勤務を継続する方針を掲げている会社の数を考えれば、ビデオ会議がなくなることは当面なさそうだ。したがって、会議をはじめとする会合をより生産的に、さらにより面白くするためには、ビデオチャットの後でなぜ疲れを感じるのかを理解することが重要である。

 そして、その解決策がビデオゲームや音楽の世界に存在することを、ビデオプラットフォームの開発者は知る必要がある。