●舞台を整える

 これを実現するには、セルフケアの時間は神聖にして侵すべかざる時間であり、それを守り切るという決意が必要だ。それはつまり、そうするためのハードルを取り除き、ポジティブ行動を強化することを取り入れることを意味する。

 たとえば、もっと運動をしたいと思った場合には、ランニングマシンをきれいにし、お気に入りのワークアウトビデオを用意するか、直前にキャンセルした場合に何らかのペナルティが発生するエクササイズクラスに、あらかじめ申し込んでおく。

 もっと健康的な食生活を送りたい人は、栄養価の高い食材の1週間分の買い物リストを作成し、健康によくない食材をキッチンからなくす。ピンチの日のために、すぐに食べられる調理食品やテイクアウトの選択肢を用意しておく。また、励まし合いながらともにゴールを目指すチームチャレンジに参加するのもよいだろう。セルフケアの目標を達成すると、賞品がもらえる場合もある。

 その時点のポジティブ行動を強化するために、細かな準備をしておく。自分と目標の間にある摩擦を取り除くのだ。たとえば、ワークアウト用ウェアをベッドの足元に並べておく、あるいはパジャマとしてそれを着て寝ると、起きてすぐにランニングに出かけられる。決まった時間に携帯電話やPCが使用できなくなるアプリをインストールし、十分な睡眠時間を確保できるようにする。

 自分がやると決めたことと、なぜそれが自分にとって大切かを忘れてはいけない。疲れたり、やる気を失ったりした時でも、それがあれば、やり続けようという判断につながる。

 ●周囲に意志を示す

 最後に、周りの人にも認識してもらう。配偶者がよく夜更かししてテレビを観ている場合は、後で観たい番組があると伝えてベッドに向かう。子どもが早朝から起き出した時には、しばらく自分たちだけで安全に遊べるような年齢であれば、自分は朝、エクササイズや読書、ベランダでコーヒーを飲んで過ごすことを説明して、それを一緒にやってもよいし、自分が終わるまで遊んでいてもよいと伝える。

 仕事でも、同様の境界線を引く。誰かが早朝や夜遅い時間に会議を提案した場合、交渉の余地があるならば、自分の睡眠スケジュールや、その他のセルフケア習慣に都合のよい時間に変更できないか聞いてみる。

 上司や顧客から、いつも締め切り間際の仕事を頼まれると感じているならば、可能なことはないか話し合うべきだ。次にやるべきことはもっと早く教えてもらえないか。仕事の依頼はもっと早くしてもらえないか。締め切りを交渉できないか。セルフケアの時間を確保するためには、自分自身を擁護し、自分のニーズを主張する必要がある。

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 あなたが本当に「オフ」を実感できるようになるかどうかは保証できない。それでも、このステップを踏み、日々、自分自身のケアに意識を向けてほしい。「オールウェイズオン」とは、自分のニーズを犠牲にしなければならないという意味ではないはずだ。時折は時間を見つけて、あなたの注意が自分自身に向けられていることを確認するという意味である。


HBR.org原文:Make Time for "Me Time", April 01, 2021.