パーパスへの共感を求心力に、
外部リソースを巻き込んでいく

 3つめのテーマとして宮尾氏は、「パーパス経営をどう進めていくか」について解説した。

 まず、パーパス経営の実践のために必要な要素として、「Adapt/Refine」(適応/再定義)、「Involve/Create」(巻き込み/価値創出)、「Serve/Expand」(提供/拡大)の3つを挙げた。

「変化する社会に適応するためにみずからのパーパスを再定義し、ステークホルダーを巻き込みながら新しい価値を生み出す。そして、それを製品・サービスとして顧客に提供し、スケールさせるというプロセスが求められる」

 さらに、これらのプロセスを回すための“道具”やアプローチ方法として、「Technology」(テクノロジー)、「Cloud Resource」(クラウド資源)、「AI Powered Execution」(AIによる実行)の3つを挙げた。

 宮尾氏は「先ほど紹介したサスメドのように、テクノロジーを活用すれば、パーパス経営の前に立ちはだかる制約を解消することは可能だ」と述べ、未来をつくり得るテクノロジーの一例として、ただの水でもカクテルを味わうような感覚になる技術を開発したシンガポール大学の研究(ヒトのアップデート)、バクテリアの活用によって自己修復する「生きた建材」を開発した米コロラド大学の研究(都市のアップデート)、新型コロナウイルス感染拡大による雇用の不安定化に対応して、人材情報共有と人材シフトのためのマッチングプラットフォームを開発したアクセンチュアの事例(社会のアップデート)、などを紹介した。

 また、クラウド資源の活用については、「社会変革に貢献するためには、個社のリソースだけでは不十分。ITのハードウェア、ソフトウェアといった“狭義のクラウド”だけでなく、技術や資金、労働リソースといった“広義のクラウド”を活用する必要がある。パーパスへの共感という求心力を働かせて、より多くの外部リソースを吸引することが重要だ」とアドバイスした。

 クラウド資源活用の例として宮尾氏が挙げたのは、SDGs(持続可能な開発目標)観点での取り組みに使途を限定したトヨタ自動車の社債「トヨタ Woven Planet債」の発行計画と、アクセンチュアが福島県会津若松市で行っている「スマートシティ会津若松」というプロジェクトだ。

 会津若松のプロジェクトでは、スマートシティづくりのため、産業・企業や行政、資金だけでなく、市民も巻き込んだ取り組みが行われている。プロジェクトに関する共感と同意のもと、市民にデータを提供してもらい、その分析・活用によって行政サービスや民間サービスを改善していくという取り組みだ。

 宮尾氏は、「アクセンチュアも、みずからのパーパスを『テクノロジーと人の創意工夫で、まだ見ぬ未来を実現する』と再定義し、従来の価値提供領域であった財務だけでなく、人財、イノベーション、サステナビリティといった新たな領域に挑んでいる。会津若松での取り組みは、その一例」だと説明した。

 最後に宮尾氏は、「今後も当社のパーパスに沿って、顧客企業のパーパス経営を全方位で支えるサービスを提供していきたい」と語り、講演を終えた。

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