●教え導く役割

 良質かつ効果的な子育てに関する研究は共通して、愛情を表現し、コミュニケーションを取り、サポートし、価値観を教え、範囲を決めるといった要素の必要性を説く。専門家や研究によって表現は異なるが、これらのコンセプトは「教え導く役割」とまとめることができる。

 教え導く役割を果たすには、親が情緒的に子どもとつながるエネルギーと余裕を持つ必要がある。多くの研究は、親が関与すべきという観点から、この役割を優先順位のトップに位置付けている。

 教え導く役割を優先するには、毎日、特別な目的を設定せず、子どもに集中して穏やかに過ごす時間を少なくとも30分つくろう。朝食の時間でも、夕食の前後でも構わない。毎日規則正しく、落ち着いて過ごせる時間であれば、いつでもよい。

 親がマルチタスキングや雑用、家事に忙殺されていると、教え導く役割を果たすのは難しい。この30分間はスケジュールからすべての用事を外して、子どもだけに集中する。教え導く役割は、子どもが成長するにしたがって重要性を増す。そのため、年長の子どもについては下の子どもがベッドに入った後に、30分の時間を確保する方法を考えなくてはならない。

 この30分の間に、子どもに自由回答式の質問をしよう。好奇心を持って、興味を示すこと。たとえば、今日はどのような1日だったか、今日のスポーツ大会はどうだったか、何か助けが必要なことがあるか、新しい先生についてどう思うか聞いてみる。

 そして愛情を示すこと。ほめてあげたり、抱きしめたり、サポートの言葉をかけたりすると、大きな違いが生まれる。態度には出さないことが多いが、ティーンエイジャーでさえ、落ち着いた状況ではこうした愛情表現を嬉しいと思うものだ。

 ●意思決定

 意思決定には、重い責任を伴う場合がある。医療に関する問題や大学の学費の選択肢のようにこれまで知らなかったトピックについては、決定を下す前にリサーチが必要なものがある。難しいトレードオフが含まれていて、予期せぬ結果をもたらすこともあるだろう。

 自分の子どもには、どの科目や活動に力を入れるよう促すべきか。学校で事件があった場合、どう対処するのが最善なのか。勉強を助けるために、家庭教師を雇うべきか。何歳になったら、親が同行することなく、子どもだけで外出することを許すべきか。

 その決定の種類によって、親の関与が必要なレベルは異なる。教え導く役割や医療に関わる問題が伴う場合は、親が関与すべき必要性は明らかに高い。だが、それ以外の状況、たとえばどの課外活動に参加すべきか、お泊まり会に行っていいかといった決定は、誰かに委任できるかもしれない。

 さほど重要ではない決定については、配偶者やパートナー、家族ぐるみで付き合いのある友人、ズームで連絡が取れる「拡大家族」(あなたの「子育てエコシステム」にいる人々を指す)に助けてもらう。研究によれば、別の大人が子育てのエコシステムに加わると、親にとって助けになると同時に、子どもの情緒的ウェルビーイングにも利益があることが明らかになっている。思春期の場合は、特にそうだ。

 このように助けになってくれる可能性のある大人と、定期的に連絡を取り合い、基本的な考え方を一致させておこう。また、子どもの成長にしたがって、こうした決定に関して子ども自身が持つ権限の範囲を広げていく。

 さらに、子どもには問題解決のスキルを教える。冷静さを保つ方法、複数の選択肢を評価する方法、起こるうる結果を検討する方法だ。そうすれば、あなたがすべてに関与しなくても、年齢に応じて自信を持って決断を下せるようになる。たとえば10歳の子どもならば、あなたが決めなくても、自分で天気予報をチェックして、学校にコートを着ていくべきかどうか判断できるだろう。