モチベーションと機会

 最初のステップは、社内のチームメンバーとプロジェクトベースの個人請負労働者のモチベーションと機会の違いを理解することだ。どちらのグループも基本的にはプロジェクト自体を楽しみにして、よい仕事をしたいと思っている。だが現実には、ワークライフに関して以下の3点で違いがあるため、それぞれの外的モチベーションはやや異なる。

 ●報酬体系

 フルタイム従業員は給料をもらうのに対して、個人請負労働者は時給または固定料金で報酬を得る。そのため、彼らの緊急意識や時間管理は無意識のうちに、あるいは意識的に異なる可能性がある。

 個人請負労働者が時給ベースで仕事をしている場合、残業の有無にかかわらず同じ金額の給料を受け取っているフルタイム従業員に比べて、仕事に時間をかけることに大きなインセンティブを持つ可能性がある。一方、個人請負労働者が固定料金の報酬を得る場合、プロジェクトがいつ完了しても同額の給料を受け取るフルタイム従業員に比べると、迅速に仕事を片付けたいと思うかもしれない。

 このように、どちらのグループも期限を遵守したいと思っていても、希望する仕事のペースは異なる可能性があるのだ。

 フルタイム従業員は給料以外に福利厚生の恩恵を受けるが、ほとんどの個人請負労働者はその対象にならないことにも留意したい。また、フルタイム従業員が対象に含まれる会社の連絡事項や各種プログラムについても、労働法によって保護されていることから、個人請負労働者は参加できない可能性が高い。

 これらの違いは、福利厚生の一部を享受したい個人請負労働者、あるいはそもそも自分には何が適用されるか判断できない個人請負労働者が、不満を募らせたり、混乱したりする恐れがある。

 ●キャリアアップの方法

 大きな組織に所属するフルタイム従業員の場合、成功したプロジェクトチームの一員だったことは、社内でキャリアアップするさまざまな可能性につながることが多い。自分の興味があり、挑戦しがいのある新規プロジェクトに参加したり、別の部署に移動したり、責任の大きなポジションに抜擢されたりするかもしれない。

 ただし、そうした機会を得るには、マネジャーやシニアレベルのプロジェクトスポンサーに認められる必要がある。そのため、プロジェクトレビューや他のミーティングでみずからの存在感を示し、リーダーとしての役割を担いたがる可能性が高い。

 それは、個人請負労働者が注目を浴びる時間を減らすことにつながる。とはいえ、それと同時にフルタイム従業員は、自分の上司の前で、個人請負労働者の同僚が自分のことを褒めたり、太鼓判を押したりしてくれることを望むだろう。

 個人請負労働者にとってのキャリアップとは、スキルを向上させることができる新たな仕事を見つけたり、これまでにないタスクやより大きなタスクに対応したり、新しいタイプの組織に参画したりすることを意味する。

 そのために、個人請負労働者は紹介や推薦以外に、関連するソーシャルメディアで「好意的な記事」を求める。それを与えてくれるのは、多くの場合、チームのメンバーやリーダーだ。彼らは誰もが、ソーシャルメディアに記事を投稿できる。

 とはいえ、別の組織や部門に対して強力な後押しとなるのは、シニアレベルのプロジェクトスポンサーによる推薦である可能性が高い。したがって、個人請負労働者もある程度、自分の存在を知ってもらいたいと考える。重要なのは、社内の人間が必要な称賛を得る一方で、個人請負労働者も推薦につながる信用を得られるように、適切なバランスを図ることだ。

 ●仕事に対する安定感

 フルタイム従業員の場合、プロジェクトに自発的に参加したり、積極的に訴えて参加させてもらえたりすることがある。だがたいてい、当該のプロジェクトに参加できるか、そこでどのような役割を得るか、どの程度の期間関わるかは、個人で選べるものではない。そのため、会社や社内政治、昇進の要件に縛られない個人請負労働者の柔軟性や自由をうらやましいと思うかもしれない。

 その一方で、個人請負労働者は常に一定の不安を抱えて仕事をしている。フルタイム従業員にとっての会社組織のような「ホーム」や決められた給料はなく、予期せぬ市場の変化に翻弄されやすい。

 こうした違いは、「隣の芝は青い」という感覚をもたらしうる。個人請負労働者はフルタイム従業員として雇用されることを目指し、そのプロジェクトを採用面接の延長のように利用するかもしれない。社内の人間は、将来一緒にビジネスを興したいと願って、個人請負労働者と親しくなっておきたいと考えるかもしれない。