チームメンバーの理解

 まずは、前述した違いを明らかにすることから始める。フルタイム従業員、続いて個人請負労働者と、1対1または少人数グループで、率直にディスカッションする場を持つ。当該のプロジェクトから個人的に何を得たいか、何を学びたいか。自分のキャリアプランのどこにはまると考えているか。そして、最終的にどのようになれば成功したと思えるか。

 当然のことながら、どちらのグループも自分の野心を完全に打ち明けてくれることは期待できないし、自分自身が何を望んでいるかさえ、わかっていないかもしれない。だが、少なくとも会話の端緒をつくり、フルタイム従業員と個人請負労働者の違いをある程度把握することはできる。

 また、不適切となる可能性がある行動(たとえば、個人請負労働者が顧客にアフターサービスを個人的に提案する、フルタイム従業員が重要な情報を個人請負労働者には提供しないなど)についていくつかのガイドラインを示したり、それぞれの目標達成を助ける方法を見つけたりすることもできる。

 たとえば、あるリーダーはこうしたディスカッション終了後、個人請負労働者数人と社内の人間でペアを組ませ、スキル強化を支援した。これは、会社とより長期的な関係を構築したいと希望する個人請負労働者の助けとなり、社内の人間が専門性を高める機会にもなった。

 このプロセスによって、フルタイム従業員と個人請負労働者の間で「『我々』対『彼ら』」という感覚を取り除くこともできた。

チームビルディングと共通理解

 メンバーのモチベーションや機会、バックグラウンドが異なるチームのリーダーは、特にチームビルディングと共通理解に力を入れる必要がある。バーチャル環境では、特にそうだ。

 特定のプロジェクトベースで参加している個人請負労働者やギグワーカーは、新しい同僚のことを知らないだけでなく、そのプロジェクトの組織的、政治的、戦略的コンテクストもまったく理解していない可能性が高い。そのプロジェクトが達成すべきことや、その理由を誤解している可能性さえある。

 また、マネジャーがフルタイム従業員と個人請負労働者とのディスカッションで把握する相違についても、グループの双方とも十分理解していないだろう。

 こうした理解のギャップを踏まえると、いきなりチームを集めて、簡単な自己紹介をし、誰が社内の人間で誰が社外の人間か確認したら、一緒に仕事に取りかかるというわけにはいかない。そうではなく、プロジェクトの目標や組織におけるコンテクスト、関係者、これまでの試み、今後直面する可能性がある問題などついて、チーム全体が同じ理解を共有できるように、しっかり取り組むことが重要だ。

 たとえば、筆者らが観察したある製薬関連の研究プロジェクトでは、リーダーはまず、1週間にわたって社内メンバーと社外メンバーが参加するブートキャンプを開催した。そこで、プロジェクトが抱える科学的な難題、その戦略的重要性、そしてチームメンバー全員の権限と役割を含め、広範にわたるオリエンテーションが行われた。

 これにより、最初の段階からチーム全員が共通理解を持つことができた(社内の人間は当初、すでに自分たちが知っているトピックに時間を費やすことに懐疑的だったが、プロジェクトが抱える最重要課題と最善の対処法について理解を深められたと感じた者がほとんどだった)。

 メンバーの共通理解は、プロジェクトの最初の段階のみならず、その後も続くチームビルディングの取り組みを通じて、さらに強化する必要がある。

 前述した製薬関連の研究プロジェクトでは、社内外の科学者が互いに自分の研究について発表し合う機会を定期的に設けるなど、専門分野を中心にしたイベントを開催すると同時に、社交イベントを開き、チーム全体でメンバー同士がもっとよく知り合うための機会をつくった。