●独りよがりにならない
筆者らが仕事で関わるリーダーの多くは、それぞれが直面する課題の中で絶え間ない変化や不確実性を経験し、孤立を感じている。こうした孤立感の一因は、すべての問題を自分で解決しなければならないという暗黙の信念にある。
仕事の複雑性が増して負担も増えれば、生来の傾向として、必要な集中力や個人的な努力を倍増させる。解決策がわかっていて、比較的短期間で対処できる課題なら、これは有効な戦略になる。
しかし、解決策はおろか、問題の全容や相互依存関係がはっきりしない状況では、悲惨な事態を招きかねない。こうした場合には、洞察や視点を求めて、自分のネットワークやその外側に、意図的に働きかける訓練が最も重要になる。
私たち一人ひとりが持ちうる知識や、どのような状況であっても常に客観的な視点を持つ能力には、どうしても限界がある。しかし、それぞれの経験や視点を持つ仲間や同僚とネットワークを築き、つながりを持つことによって、自分の知識や視点を飛躍的に広げることができる。
筆者らのクライアントであるCEOは、次のように語った。「複雑な問題を理解しようとする時、私はまず、自分と異なる経験を持ち、自分がその人の意見を尊重したいと思う相手に話を聞きます」。そして、こう続けた。「彼らなら、この状況をどのように見るだろうか。彼らの見解はどのようなものか。ほかに誰と話をすべきか。彼らに答えを期待しているのではなく、彼らの思考やリソースを知りたいのです」
●ズームアウトする
リーダーは目の前の課題に没頭するあまり、身動きが取れなくなることが少なくない。
ロナルド A. ハイフェッツ、マーティ・リンスキー、アレクサンダー・グラショウが共著書『最難関のリーダーシップ』で述べているように、「ズームアウト」、あるいは「ダンスフロアからバルコニーへ移動」することによって、より広い視野と体系的な視点で問題をとらえることが可能になり、そうしなければ見えていなかった裏づけのない思い込みにも光を当てることができる。
見晴らしのよいバルコニーに立つことで、相互依存関係やより大きなパターンが観察でき、予期せぬ障害や新たな解決策が明らかになる可能性もある。こうした全体的な視点を通して、必要に合わせて適応し、軌道修正できるようになる。定期的にダンスフロアからバルコニーに移動する習慣を身につけることによって、物事を大局的に見る能力を高め、より機敏に行動できる。
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リーダーとして直面する変化や不確実性、複雑性の度合いを自分でコントロールすることはできないと思い知らされる出来事が、日々起きている。しかし、これら6つの戦略を通じて、継続的に学び、成長し、ますます複雑化する世界をより有効に乗り越える力を高めることができるだろう。
"6 Strategies for Leading Through Uncertainty," HBR.org, April 26, 2021.