●完璧主義を手放す

 複雑な環境において、状況は常に変化している。したがって、完璧を目指しても意味がない。むしろ、進歩を目指し、失敗を予期し、必要に応じて常に軌道修正する能力が重要だ。パフォーマンスが高く、完璧主義の傾向がある人は、自我や期待されているアイデンティティ(たとえば、成功すること、「専門家」であること)がじゃまになりかねない。

 完璧主義を手放すには、「失敗するだろう」「自分が悪いと思われそうだ」「間違った判断をするのではないか」といった、自分の不安の引き金になっている具体的な核心部分を特定し、受け入れる。その根底には、「こうした不安が現実になったら、自分は立ち直れないだろう」という暗黙の、しかし裏づけのない思い込みがあることが多い。

 筆者らは、クライアントがこうした思い込みを積極的に否定できるように、キャリアにおけるミスや失敗の役割について、彼らが尊敬する人と話し合うように促すことがある。すると、結果として得られた学びや新たな機会、プロフェッショナルとしての成長についてはいろいろな話を聞くが、彼らが想像していたキャリアの終焉を招く大惨事について耳にすることはない。

 こうした思い込みの鎖を、時間をかけて緩めていくうちに、完璧主義を手放し、ミスや失敗は当然のことだと受け入れられるようになる。

 ●過度の単純化と性急な結論という誘惑に負けない

 複雑な課題を過度に単純化して、それほど手強くないと思いたくなる時もある。

 たとえば、課題をそれぞれの構成要素に分解していくと、目の前の問題を簡単に解決できるように感じるかもしれないが、一方で視野が狭まり、重要な相互依存関係が見えづらくなるため、間違った安心感を得ることになる。同様に、過去に直面した課題から類推することも有効だが、現在の課題に独特なニュアンスを見落としかねない。

 優れた業績を上げている人の多くは、アクション・バイアスを持っていて、明確な解決策や行動方針が示されていない課題に直面すると、簡単に挫折してしまう。リーダーは即座に解決したいという欲求に屈することなく、問題の核心と自分自身のアクション・バイアスの両方を理解するために、規律のあるアプローチと行動の必要性のバランスを学ばなければならない。

 たとえば、組織がダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平性)、インクルージョン(包摂)のDEIに取り組むリーダーを採用しても、採用や昇進、研修、報酬に関する時代遅れの慣行といった体系的な問題に手をつけなければ、不十分だ。