●トライアルプロジェクトに参加させる

 採用過程にチームを巻き込み、候補者との相性を評価する最適な方法は、候補者とチームが一緒に仕事をすることだ。ほとんどの会社がトライアルやオーディション、仕事のサンプル、あるいはそれに類するものを使い、候補者の仕事のスタイルやチームへの適合性を感じとろうとしている。

 理想的には、大規模かつ重要なタスクではないほうがよい。候補者を無給で働かせることが目的ではないからだ。

 とはいえ、各候補者を観察し、協働できるだけの内容のあるプロジェクトでなくてはならない。リソースや指示の1段階を意図的に省き、そこから生じた問題に候補者がどう対処するかを観察することで、トライアルプロジェクトを適応力や創造的思考の評価方法として活用することもできる。

 完全分散型企業のザピアーでは、トライアルがさまざまな職務の面接プロセスで活用されている。ソフトウェアエンジニアの採用候補者には自社プロダクト開発に取り組ませ、マーケティングの採用候補者には自社ブログの記事を一緒に書かせる。

 採用候補者に有給の長期間トライアルを行う企業もあるが、たいていの場合、数時間で完了するもっと単純なプロジェクトでも、候補者の仕事ぶりや、チームと一緒にうまく働けるかどうかを十分に判断できる。

 ●求めていることについて早めに、そして頻繁に伝える

 リモートで面接や採用を行う必要が出てきたという事実だけでも、多くのリーダーにとっては驚きだったかもしれないが、企業が徐々に(そしておそらくハイブリッドで)オフィスに人員を戻す準備を進めるうちに、さらに多くの驚きが待っているはずだ。

 入社したら実際にどの程度リモートで働くのか、採用プロセスで候補者に早めに、そして頻繁に伝えるようにする。社内にリモートワークについて文書化した資料があるなら、求人情報や最初の面接でできる限りそれを共有しよう。

 そのような資料が存在しない場合は、少なくとも会社のリモート計画や将来の方針についてわかっていること、チーム内で話し合われていることなどを伝えることができるだろう。リモートで働く優秀な人材をチームに加えてから半年後に、実はリモートで働けるのは週に2回だけと告げたことでその人材を失う、といった事態は避けたいからだ。

 同様に、コミュニケーションとチームの規範に基づき、どのような振る舞いが期待されているかを明確に伝えよう。協働作業のルールの土台となるようなチーム内の不文律や合意事項がある場合には、新メンバー用の「取扱説明書」のようなものとして、できる限り共有しよう。

 採用通知を送り、それが受理されたら、入社時の研修では新入社員がチームや組織全体とのつながりをつくることを優先しよう。

 たしかに、さまざまな書類を整える必要はあるが、それよりも新メンバーが直属の上司や他のチームメンバーとの関係を築けるようにすることを優先すべきだろう。オンライン歓迎会を計画して、チーム全員が新メンバーと話ができるようにするのもよい。歓迎するメールまたは動画を作成するよう各チームメンバーに頼んでもいいだろう。

 ここまでに紹介した採用プロセスを経ていれば、チームメンバーの多くはすでに、面接の過程で新入社員に会っていることになる。その場合には、その人のどこが優れていると思ったか、なぜ一緒に働くのを楽しみにしているかについて語るようチームに依頼するとよい。

 本稿で紹介したアイディアに一貫している共通点が、「チームフィット」(チームへの適応)だと感じたとしたら、それはまさにその通りだからである。そうは見えないかもしれないが、リモート環境ではチームワークがこれまで以上に重要になる。このため、チームにうまく適応できるかどうかが、いっそう重要なポイントになる。

 リモートワークとは、一人で働くことではない。皆でともに一人で働くことなのだ。


"How to Hire Someone You've Never Met in Person," HBR.org, May 07, 2021.