
新型コロナウイルスの感染拡大は、採用の常識を大きく変え、候補者と一度も会わずにオファーを出すのも珍しいことではなくなった。リモート採用により、候補者選びに場所の制約がなくなったことは大きなメリットだ。一方で、候補者がチームメンバーや組織文化にフィットできるかを見極めるのは、これまで以上に難しくなっている。本稿では、適任者を見極めるうえで有効な4つの方法を紹介する。
いつの時代も、人材採用はリーダーの重大な役割の一つである。
仕事の適任者を見つけることは容易ではなく、ほとんどのマネジャーにとって最も重大な意思決定になる場合が多い。チームの成功や失敗に大きな影響を及ぼすからだ。そのうえ、候補者と実際に対面で会わないままリモートで採用を決めるとなると、独特の難しさがある。
大半のマネジャーは、対面で行う採用候補者との面談に十分な時間をかけて初めて、採用するかどうかの意思決定を下すことを好むだろう。候補者に必要な知識やスキル、経験があるのかを知りたいだけではなく、その人とうまく一緒に働けるかどうかも知りたい。そのためには、相手に対面で会う必要があると思っていた。
ところが、新型コロナウイルスのパンデミックで、すべてが変わった。リモート採用への方向転換は、それが自発的に行われたとしても、そうでなかったとしても新たな機会をもたらすと同時に、新たな問題も生み出した。
採用活動がおおむね場所に制約されなくなったため、より多くの人材プールから人を選べるようになった。半面、チームの新メンバーにふさわしい人を見つける際に留意すべき、新たな不確定要素も数多く生じているのだ。
適任者を見つける確率を高め、採用された人がチームの新たな一員として成功する確率を高めるために、採用プロセスに取り入れてみるといいアイディアをいくつか紹介しよう。
●複数のプラットフォームで面接する
かつて対面で面接を行っていたのだから、リモートで採用する時はビデオ通話での面接に切り替えればよいと考えたくなるだろう。しかし、リモートという環境下では、チームとのコミュニケーションもメンバー間のコミュニケーショも、同時に画面に映る顔を見ながら行うことなどめったにない。
したがって、候補者の好むコミュニケーション方法がどの程度チームに適合するかを評価することが面接プロセスの目的であるなら、面接用のプラットフォームやコミュニケーションツールを多様化する必要があるだろう。
オートマティックの創業者マット・マレンウェッグは、かつてオンラインチャットで採用候補者全員との最終インタビューを行っていた。面接相手の性別や人種を事前に知ることなく、画面上の文言のみで判断した。
2014年の『ハーバード・ビジネス・レビュー』の論文で、マレンウェッグはこのプロセスがバイアスをできるだけ排除するためのダブル・ブラインドテストに最も近いと説明している。彼が候補者に求めていたものは、情熱とカルチャーフィット(組織文化への適応)だった。
あるいは面接の1段階をビデオ通話で行い、別の段階をメールで、さらに別の段階を音声のみで行うといったケースも考えられるだろう。いずれにせよ、チーム内で協働作業を行う際に使うコミュニケーションツールを、面接プロセスに含めるべきだ。
候補者に事前にいくつかの質問をして、その答えを2分間の動画に収録して提出してもらうのも一案だ(この方法なら、どれほど端的に情報を伝達できるか、指示にどの程度従うかも評価できる)。その時に投げかける質問は、技術的なものでも状況に関するものでも構わないが、あとで動画を比較できるように候補者全員に同じ問いかけをすべきである。
●チーム全員を参加させる
我々は長年にわたり、個人の業績はその人の知識やスキル、能力の結果だと想定していた。しかし、研究が進めば進むほど、それ以上のものが関わっていることがわかってきた。
協業とチームダイナミクスが、個人の業績に大きな影響を及ぼすのだ。個人の業績さえも、所属するチームとそのチーム(および会社)が供給するリソースの影響を受けるからだ。
リモート環境でも、新人が加わることでチームの短期および長期の業績は劇的な影響を受けるので、なるべく多くのチームメンバーを採用プロセスに参加させることには大きな意味がある。
チームメンバーが候補者と一対一で会って面接するという方法もあるし、何人かのチームメンバーが出席してざっくばらんにグループ面談を行うのもよいだろう。冒頭で提案したような文面による返信やビデオ通話の回答を保存しているなら、それらを現在のチームメンバーと共有して、最終決定を下す前にフィードバックを得ることもできる。
完全分散型企業のパラボルは、さらに一歩進んだ取り組みを行っている。同社では、面接プロセスの「自社文化への適合力」を確認する段階で、各チームから最低一人は必ず面接に同席するようにしている。