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有給休暇を消化しなくてはならないと思いつつ、進行中のプロジェクトを抱え、自分の不在中に何かあったら困ると、先送りにすることが少なくない。しかしそれでは、休暇がもたらす本当の恩恵を得ることはできない。休暇は、単に体を休めるだけでなく、レジリエンスを高めたり、新たな視点を得たりする機会となる。さらに、あらかじめ念入りに準備を進めることで、組織のリスク管理や部下の育成にさえつながるという。本稿では、仕事上でも私生活上でも、休暇を最大限活用するための具体的な方法を提示する。


 米国では新型コロナウイルス感染症のパンデミックより以前から、数多の有給休暇が利用されずに消えていた。他の多くの問題と同様、今回のパンデミックは、この問題をいっそう悪化させたにすぎない。

 誰もが、環境を変えて気分転換をしたいと熱望している。研究によれば、休暇を取得することはさまざまな理由から重要とされる。休養を取り、仕事から離れることは、レジリエンス(再起力)を高めるという。そうすることで、人々は職場で必ず経験する挫折に上手に対応できるようになる。

 休暇を取ることで新たな視点を得られ、それが新たな問題解決策を見出す助けにもなる。また、人生における他のゴールを追求する機会をもたらす。つまり、家族と一緒に過ごすことに時間を使ったり、世界を見て回ったりできるのだ。

 世界各地でニューノーマルが定着し始めているいまこそ、有給休暇を使うべき時であり、どうすればその休暇を最も効果的に活用できるかを再考すべき時でもある。

 ●できれば、前もって計画を立てる

 パンデミックによって多くのことが寸断され、何をするにも前もって計画を立てることが難しく、あるいは不可能になった。だが、状況が少し改善してきているようであれば、少なくとも3カ月以上前には休暇の計画を立てる。

 解釈レベル理論に関する研究によると、人は時間的距離が近くにある物事より、遠くにある物事をより抽象的にとらえる。つまり、計画を立てようとしている日程に近づけば近づくほど、そもそも休暇を取ろうと決心する確率が低くなるのだ。

 3カ月先の休暇であれば、「どれだけ楽しみか」という一般的原理に目を向けることができるだろう。やがて旅行に出る日が近づいてきたら、計画の実行に必要なロジスティクスに頭を切り替える。たとえば、不在中の職場で予定されていることは何か、人に任せる必要があるタスクは何かなどである(この点に関して詳しくは後述する)。

 ●少なくとも1週間は休暇を取る

 休暇は最低でも1週間取得することが重要である。なぜなら、メールやプロジェクト、チームメンバーなどについて考えずに済む状態になるまで、たいてい1~2日はかかるからだ。1週間、あるいはそれ以上仕事を離れられるなら、「明日もまだ休暇中だ」と思える日が数日間はある。休暇の終わりはまだ先だと思えれば、リラックスできる。