●どこでもよいから、どこかに出かける
経済的余裕があれば、休暇中は家から離れて、なるべく多くの責務から逃れられるように最善を尽くす。おそらく、あなたを頼りにしている人々は大勢いるだろうが、多くの意思決定を下す必要のない期間を設けることが、あなたにとって重要である。
家から離れることは、その一助となる。近隣のベッド・アンド・ブレックファスト(B&B)に泊まるだけでもよい。自宅に留まるステイケーションは安上がりだが、仕事に関わる責務を思い出させるものに囲まれたままになる。自宅の仕事場が目に入り、家の中で掃除や修理が必要な場所も目につくだろう。
いま自分がいる環境が、どのような記憶を引き出すかに影響を与えるため、文字通り目に入れなければ、そのことについて考えずに済むのだ。物理的に距離を置くことで、仕事や他の責務を具体的ではなく抽象的に考えることを促してくれる。
●同僚やクライアントには、早めに知らせる
丸1週間、あるいは2週間も仕事から離れることに、あなたは不安を抱くかもしれない。継続中のプロジェクトで、注意が必要なものは常に存在する。クライアントや顧客が何かしら要望を出してくるかもしれない。おそらく、監督下のメンバーはあなたの指導や助言を待っているだろう。
さらに、メンバーの休暇予定が集中している時期に休暇を取ろうとしている場合、重要なタスクに対応できる人員が少なくなるリスクもある。
こうした休暇前の不安を和らげるために、組織の中で監督者や他のリーダーに協力を求め、自分の不在中でも主要なタスクがきちんと遂行されるべく準備する。それには、旅行の日程に柔軟性を持たせる必要が生じるかもしれない。だからこそ、休暇の準備はできれば早く始めるのがよいのだ。
休暇前の時間を使って、不在中に何か問題が起きた場合、他の人々が確実に対処できるように準備する。以前の論考にも書いたように、自分のタスクを他人に任せるのが下手な人は少なくない。他人に「任せる」と考えるのではなく、仕事の一部のやり方を相手に「教える」と考えるとよい。
キャリアを重ねれば重ねるほど、誰かのメンター役を引き受ける場面が増えてくる。休暇前の時間を、他者に教える練習の機会として使う。そうすることで、実際に休暇を取得する時までには、自分の不在中であっても、すべてが円滑に回るという確信を持てるはずだ。
クライアントと直接向き合う仕事、あるいは社内の人々をクライアントとする仕事をしているなら、不在中にあなたに代わって対応するメンバーを忘れずに紹介しておく。そうすれば、大切なクライアントが助けを必要としている時に混乱が起きることはない。
重要なのは、こうした準備のすべてが、休暇でよりリラックスし、休暇から戻った時に待っている仕事量を最少化するのに役立つということだ。
休暇取得による副産物は、部下の仕事に対する自律性を促す点にもある。責任感のあるマネジャーには、直属の部下からの問いに即座に答える傾向がある。あなたがいない時、これまで自力で対応できる問題でもあなたの指示に頼っていた部下が、実際は自分でも上手に問題解決できることを発見する可能性がある。