組織としてのチャンス

 ジューンティーンスを、あなたの組織のDEIを推進するチャンスとして活用する方法を4つ紹介しよう。

(1)個人的な経験に結びつける

 米国では昨年、職場における人種的不正義などのDEI関連のトピックについて、ビジネスリーダーはどのように学ぶべきかに関して、さまざまな助言がなされた。

 それは誰もが学ぶべき基本事項だが、今度は、こうした総合的な認識を個人的な行動に移すべきだ。リーダーは、自分や家族の歴史や経験、価値観、アイデンティティがこうしたイベントとどのようにつながっているかを考えて、共有すべきである。

 たとえば、ジューンティーンスの重要性がようやくわかってきたというリーダーは、この機に自分の弱みをさらし、自分が学んだことをグループに打ち明けてみよう。さらに、自分のチームと話し合う機会をつくろう。

 従業員たちは、ジューンティーンスを知らなかったのは自分だけではなかったと知って、あるいは自分の知識を共有したいとずっと思っていて、熱心な様子で会話に参加してくることに、あなたは驚くかもしれない。

(2)メッセージを行動につなげる

 ジューンティーンスは自由を祝福するだけでなく、機会と公平性とアクセスを祝福する日でもある。このことを忘れてはいけない。NPOのコークァル(前センター・フォー・タレント・イノベーション)によると、米国の大手企業の上級幹部職に黒人が占める割合はわずか3.2%で、フォーチュン500企業のCEOに限定すると0.8%にすぎない。

 ジューンティーンスは、企業が非白人ビジネスパーソンのアクセスや昇進に目を配り、自社のDEI目標をあらためて認識して、そのために取り組む機会にもなる。たとえば、歴史的黒人大学(HBCUs)や部族大学(TCUs)、ヒスパニック系サービス機関(HSIs)、そして人種的アイデンティティに基づく同業者団体を通じて支援をしたり、採用活動をしたりすることを、本格的に検討すべきだろう。

 また、現在の(おそらく白人の)管理職が、非白人同僚の積極的なアライ(味方)やアコンプリス(協力者)になる方法をよく考えるべき時でもある。さらに、黒人をはじめとする非白人従業員の昇進や幹部就任の機会を拡大するリソースやイニシアチブに投資して、「口先だけでなく行動を起こす」べきだ。

(3)意義を拡大する

 ジューンティーンスを会社の有給休暇にすることが、正しい方向への一歩であるのは間違いないが、それだけでは不十分だ。キング牧師記念日がボランティア活動の日とされているように、ジューンティーンスは「活動を休む日ではなく、活動の日」として祝福されるべきだ。

 ジューンティーンスをはじめとする文化的祝日を職場で有意義な日とするために、企業や従業員は、全米に160カ所以上ある黒人/アフリカ系米国人の博物館や記念地や文化センターのいずれかを訪れたり、米国の制度的人種差別や抑圧の遺産を説明する重要文献を配布したり、近隣のジューンティーンスの祝福イベントに参加することや、地元の黒人商店利用を促してはどうだろう。

 ジューンティーンスなどの文化的祝日を、受け身に祝福するのではなく積極的に祝福すれば、形ばかりの評価ではなく、企業としての目的や関連性を示唆できるだろう。

(4)インターセクショナリティを称える

 会社が、あるグループの祝日をハイライトすると、ほかのグループの人たちが取り残された気分になる可能性がある。「自分のアイデンティティ集団の記念月や日はないから、私が祝される機会はない」といった具合だ。

 だからといって、あるグループの経験が目立たないようにすべきではない。さまざまな人が、さまざまな不正義を経験しているのだ。それよりも共感の力を使って、社会の底辺に追いやられたグループ(奴隷にされた黒人)が経験したことに思いを馳せ、その解放が国全体に何を意味するか、そしてこうした進歩が万人に何を意味するかを考えるよう促そう。

 DEIのテーブルには、全員が座るスペースがある。私たちが変化を擁護すれば、それは全員を高め、全員にとってインクルーシブな環境をつくることになる。同時に、人間には人種やジェンダーだけでなく、性的指向や家庭環境や関心事など、複数のアイデンティティがあることにも気づく必要がある。退役軍人、移民、アーティスト、フィットネス愛好家、といったアイデンティティもあるだろう。

 たとえば、米国では、6月はプライド月間(性的少数者の祝福)でもある。どんなDEIイベントも、従業員は自分のさまざまな側面を職場に持ち寄っているのだという事実を祝福すべきだ。したがって、ジューンティーンス(あるいは性的少数者をはじめマイノリティグループに関連するあらゆる日)の祝福に際しては、誰もが職場で正真正銘の複雑な自分になれると感じられるよう配慮しよう。

 1度きりの、あるいは形だけのDEI祝福には、多くの従業員が不満を抱くはずだ。したがって企業とチームは、特定の日だけでなく1年中、さまざまなアドバイスに耳を傾けるべきだ。

 DEIの努力に休みはない。しかし、ジューンティーンスのような祝日を結束の機会にすれば、そうした努力の旅を一段と遠くまで進めることができるだろう。

編注:当時のタルサには全米で最も裕福な黒人居住地区があった。


"How Your Organization Can Recognize Juneteenth," HBR.org, June 17, 2021.