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新型コロナウイルスの感染拡大は、グローバルサプライチェーンに大混乱をもたらし、国際物流に甚大な打撃を与えた。ただし、その危機から立ち直るまでのスピードも目覚ましく、いまではコロナ以前かそれ以上の水準まで回復している。本稿では、世界最大の国際物流会社DHLエクスプレスでCEOを務めるジョン・ピアソンらが、組織が危機から素早く再起するための3つの教訓を示す。


 2020年はじめに新型コロナウイルス感染症が世界に拡大すると、貿易の規模は史上最速のペースで縮小した。しかし、貿易量は同年半ばには増加に転じ、暮れの時点でコロナ以前の水準を上回るまでになった。

 サプライチェーンが大混乱に陥り、物流業界はコロナ禍の下で、言ってみれば嵐の中の日々を経験した。物流業界がこの時期に収めた成功の教訓は、企業経営者にとって、自社のビジネスのレジリエンス(再起力)をどうやって高めるべきかを再検討する際、役に立つ可能性がある。

 読者の中には、物流業界の「成功」に注目すべきだと言われて、意外だと感じる人もいるかもしれない。実際、この景気回復期には、港湾が大混雑したり、輸送用コンテナの不足が深刻化したりした。さらにはスエズ運河でコンテナ船が座礁して、運河が一時利用できなくなる事件まで起きた。

 それでも、ここにきて世界の貿易量が過去最高に達していることから、ほかの業界にも通じるレジリエンスのパターンが見えてくる。コロナ禍で深刻な試練に直面した物流会社は、顧客のニーズに応え世界経済の回復に貢献する方法を見出したのである。

 本稿では、異なる専門と経験を持つ2人の筆者の視点から指摘できる3つの教訓を紹介したい。筆者の一人(ピアソン)は、世界最大の国際物流会社DHLエクスプレスのリーダーとしてコロナ禍を乗り切ってきた人間であり、もう一人(アルトマン)は、研究者として、データ、予測、分析にどっぷり浸かってきた人間である。