このデータセットを用いて、ワインスタインと関係があった製作者のプロジェクトと、ワインスタインとの関係が知られていない製作者のプロジェクトについて、女性脚本家のリプレゼンテーションを比較した。
筆者らの第1の研究では、#MeTooムーブメントの開始以降、ワインスタインと関係があった製作者は、それまでに比べて女性脚本家を40%多く登用していたことがわかった。これに対して、ワインスタインと関係がない製作者のプロジェクトでは、大きな増加は見られなかった。
また、女性脚本家の登用機会が改善されたのは、単なる「形だけの登用」によるものではないことも確認された。なぜなら、脚本家チームの規模に変化はなかったからだ。
興味深いことに、筆者らの分析では、このトレンドを牽引するのは主に女性製作者が含まれるチームで、製作チームに男性しかいないプロジェクトでは、女性脚本家が新たに登用される割合は大幅に少ないことが示された。
確かなことはいえないが、これは女性製作者のほうが#MeTooムーブメントに共感しやすいこと、個人的なネットワーク経由で女性脚本家を見つけやすいこと、女性脚本家を惹き付ける安全でサポーティブな労働環境づくりに確実にコミットできること、そして男性製作者に比べて女性と一緒に働く際に生じる反動が起きづらいことなどが原因として考えられる。
とはいえ、過去にワインスタインと幅広く仕事をしていた男性製作者の多くも、#MeTooムーブメント後に、女性脚本家の登用を大幅に増やしていることが明らかになっている。ワインスタインと一緒に仕事をしたことがない、あるいは限定的なつながりしかなかった男性だけの製作チームでは、#MeTooムーブメント以降、女性脚本家を登用する割合に変化は見られなかった。
このことは、#MeTooムーブメントによって女性登用をめぐる責任を追及されるかもしれない不安よりも、女性脚本家をサポートし、ジェンダー平等を推進しようというモチベーションのほうが大きかったことを示唆している。





