筆者らの第2の研究では、プロジェクトチームにおける女性脚本家の割合だけでなく、女性脚本家が関わったプロジェクトの内容についても、2017年10月の前と後で比較を行った。

 その結果、#MeTooムーブメント以降、ワインスタインと関わりがあった製作者と仕事をした女性脚本家は、ワインスタインと関係のない製作者と仕事をした女性脚本家と比べて、男性を主人公とする作品に関わる割合が大幅に拡大していた。また、女性脚本家がドラマや恋愛など一般に女性と関連づけられるジャンル(予算が少ないことも多い)だけで仕事をする割合は、減少していることも明らかになっている。

 これらの結果は、#MeTooムーブメントにより、男性が主人公のアクション映画やSF映画など、伝統的に男性脚本家に支配されていたジャンル(製作費が最も高いジャンルでもある)で、女性脚本家を締め出していたジェンダーステレオタイプが低減し、他の障壁も低くなったことが原因だと考えられる。

 さらに、筆者らはこの研究の一環として、機械学習を利用して女性が主人公の作品のストーリーラインを分析した。その結果、#MeTooムーブメント以降、ワインスタインと関係がある製作者が手掛ける作品は、そうでない製作者の作品に比べて、伝統的なジェンダーステレオタイプに反したストーリーが占める割合が大きいことが明らかになった。

 このことは、ワインスタインと関係がある製作者が、以前よりも女性をエンパワーメントして、リプレゼンテーションの壁を打ち破る作品に積極的に取り組んでいる可能性を示唆している。

 当然のことながら、#MeTooムーブメントの長期的なインパクトはまだわからない。筆者らのデータが限定的であることも、否定できない。ハリウッドがメディアから厳しい精査を受けやすいこと、またチーム構成やプロジェクトが頻繁に変わるという観点からも、今回の研究対象が多くの業界を代表する存在ではない可能性も高い。

 それでも、筆者らの研究結果は、#MeTooムーブメントのような社会運動が実際に、現実的な変化を喚起できることを示している。それは、加害者を裁きの場に引きずり出したり、未来の不正行為を防止するためにポリシーを改正したりするだけでなく、これらの問題の根本的原因に対処するうえでも、今回の定量化は大きな前進につながるはずだ。

【編注】
特定集団にジェンダーや人種などの代表が存在することやその割合を指す。


"Measuring the Impact of #MeToo on Gender Equity in Hollywood," HBR.org, May 19, 2021.