新型コロナウイルス感染症の第一波の時点では、多くのことが手探りだった。感染を十分に防ぐのはどのようなマスクか、いつ患者に気管挿管するか、直面する無数の新たなリスクをどう評価すべきか。

 ある看護リーダーによれば、多くの看護師が「退行」したという。つまり、何をすべきかが確信が持てなかったために、通常の能力レベルで仕事をこなしたり、比較的簡単な臨床判断を下したりすることができなくなったのだ。

 あるインタビューでは、一人の看護師が休暇を申請した際の体験を話してくれた。上司は、疲労やストレスの緩和に役立つだろうと同意してくれたが、有給休暇に関する病院の規定に反していたため、申請は却下された。この看護師は、心身ともに疲弊し、最善の仕事ができなかったにもかかわらず、前に突き進むことを余儀なくされた。

 看護指導官とのミーティングの際、話しづらさを感じたという看護師もいた。微妙な質問をしたり、新しい手順のやり方について詳しく聞いたりすることに抵抗があったという。そのために、危機的状況でどのように自分の仕事を遂行すればよいかを知ることが、いっそう困難になった。

 重要なことに、その抵抗感は、必ずしも自分自身にネガティブな影響が及ぶことへの恐れのためではなく、指導にストレスや緊張をもたらさないためでもあった。これらの要因が、看護師の能力を最大限発揮させるのを妨げていることは、看護師と筆者らの会話の中で明らかだった。

 にもかかわらず、筆者らは、看護師、マネジャー、病院がうまくやっていく方法を見出す場面を数多く目撃した。第1に、科学者や病院経営者からのメッセージが明確になるにつれ、看護師は期待されている仕事に対する不安が減り、より上手に患者の世話ができるようになっていた。

 第2に、上司が看護師に対して、患者との面会を禁じられている家族を安心させる方法を考えるよう奨励した。この支援を受けて、看護師は患者のためにハートの絵を描き、それを患者の手のひらに載せた。そして、ハートを手にした患者の写真を撮り、家族に見せると、この小さな行為で慰めを得たという家族からの声が繰り返し聞かれた。

 第3に、高い感情的知性(EI)を持つ上司は、従業員の成長を支援できていた。ある上司は、看護師の一人が時折、同僚から「厳しい、配慮がない」というフィードバックを受けているのを見て、別の枠組みでとらえ直す方法を示した。つまり、自分が怒りを感じた時に、他者にどのような影響を与えるかを学ぶ機会としたのだ。その看護師はコーチングを受け、自分の感情をより効果的に認識して管理するスキルを身につけたことにより、所属ユニットでの人間関係を深めることができた。

 最後に、筆者らが話を聞いた看護師は、自分の仕事を天職だと考え、自分の行動が患者の痛みを和らげ、治癒を助け、時には命を救うという認識から、誇りと充実感を得られる仕事だと論じた。さらに、こうした個人としての強みは、目的意識を持ちながら実践し、深めることができる。ある看護リーダーは毎朝、患者とスタッフの両者に奉仕するという使命に対する意志を新たにしていると語った。