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会社を興して成長させるには、投資家やサプライヤーや顧客に自社の価値を認めさせ、リソースを得る必要がある。自分たちが信用に値し、優れた製品を有し、それを市場に投入できるという「正当性」を示す必要があるのだ。本稿では、上海蔚来汽車、小鵬汽車、理想汽車という中国で急成長を遂げるスタートアップの事例をもとに、正当性を証明するうえで有効な3つの戦略を提示する。


 起業家は会社を立ち上げて成長させるために、他者から多くのものを得る必要がある。投資家からの融資、創業チームの能力と献身、規制当局からの認可、サプライヤーの協力、顧客の関心と需要などは、特に必須である。

 ただし、これらを引き出すには、それぞれのリソース保有者――つまり「オーディエンス」に対し、起業家はみずからの正当性を証明しなければならない。自分は信用に値し、優れた製品を有し、それを市場に投入できるということを示す必要があるのだ。

 この試みがひときわ難しい理由は、あるベンチャーが何をもって正当なのかについて、異なる個々のオーディエンスがそれぞれ独自の基準を持っているからだ。

 筆者らは正当性の戦略を研究する中で、中国で大きく成長中であり競争が激しい電気自動車(EV)市場に注目した(中国は世界最大のEV市場でもある)。ここでは新規参入者集団が、テスラを含む既存の自動車メーカーに挑戦している。

 とりわけ、上海蔚来汽車(NIO/ニーオ)、小鵬汽車(シャオペン)、理想汽車(リ・オート)の3社は、業界外から来て国内で頂点を狙う構えを見せている。3社とも、新規ゆえの大きな苦労と、主要リソースの不足に直面する典型的なスタートアップであった。

 しかし、テスラが量産までに9年を要したのに対し、彼らは創業後わずか2~4年で量産へとこぎ着けることができた。ベンチャーキャピタルからの融資で約70億ドルを調達し、3社とも最近米国で上場した。各社は自動車業界とのつながりを持ってはいたが、EVの設計と製造はまったく初めてのベンチャーであった。

 彼らはいかにして成功を収めたのだろうか。筆者らの研究によれば、成功する起業家は――新規参入者の場合は特に――正当性を確立して必要なリソースを得るために、3つの戦略を実行している。既存の正当性の源泉を活用すること、リソース保有者の期待に自分の行動を合わせること、そしてリソース保有者の認識や前提を定義(または再定義)することである。

 以下で、これらの戦略がどのように機能するかを見ていこう。