BX企業の姿勢と可能性

木原久明(きはら・ひさあき)
アクセンチュアビジネス コンサルティング本部 カスタマー&セールス プラクティス 日本統括 マネジング・ディレクター

東京大学卒業/東京大学大学院博士前期課程修了、2002年入社。アクセンチュアで15年以上、戦略・経営コンサルティングに従事し、現在は組織の統括責任者としてクライアントのトップライン向上をビジネスとテクノロジーの側面から支援している。

木原:BXを体現している企業の具体的な姿勢から、BXの意義を考えてみたいと思います。まずはNetflix。同社のパーパスは「“観たい”を科学した総合エンタメサービサー」であり、単に映画のストリーミングサービスを開発したのではなく、顧客のインサイトを基に作品制作の手法や鑑賞体験を再構築しました。

 GAFAの一員でeコマース普及の立役者Amazonは本の販売から始めましたが、「あらゆる“欲しい”を充足する生活インフラ」になることをパーパスとして掲げ、顧客の多様なニーズに応える商品を“即日配送する体制を実現しています。

 日本にもBXの好事例はあります。生活インフラとなったコンビニエンスストア最大手のセブン-イレブンは、「近くて便利を日常に」を標榜し、POSデータ活用による独自商品開発や行政手続き、金融サービス、災害時のニーズにも応える一大インフラに成長しました。

 ソニーはかつて“音楽をポケットに”という大きなビジョンを掲げてウォークマンを開発し、音楽を“持ち歩く”ことを可能にしました。音楽は座って聴くものとされていたそれまでの価値観を変え、ライフスタイルにまで影響を与えることに成功したのです。

 これらの企業のそれぞれの活動が多様なことから分かるように、BXは「何をやるか」ではなく「どんな思想に基づいてどのように振る舞うか」が大切です。そこでは、顧客体験のための経営になっているかどうかが問われます。

BXは他人任せにできないCEOアジェンダ

木原:企業の利益の源泉は企業の外部、つまり顧客や社会にしかありません。その顧客のニーズに応え、時には顧客自身も気づいていないニーズを満たすことによってのみ企業は存在し続けることができます。BX企業に生まれ変わるには、研究開発投資からサプライチェーン含め企業全体が変わる必要があります。BXは、CEOが自ら主導して取り組むべき重要なアジェンダなのです。

 タッチポイントを中心としたアプローチにより、顧客体験は長らく営業・マーケティング部門に任されてきましたが、BXではそうはいきません。自社の顧客を理解していないCEOに企業変革は困難でしょう。BXへの舵切りを受け入れるかどうかは、自社の経営に対するCEOのコミットメントの表れです。先送りにするメリットはありません。

 昨年3月に、アクセンチュア自身も部門の枠を超えてコラボレーションしやすい形に組織変革を行いました。あらゆる部門の専門家がクライアント企業の課題解決にあたれる体制です。黒川と私も、別の部門に所属していますが、日々連携をしてBX推進に向けた支援を進めています。

黒川:自社の体制やリソースだけでは、太刀打ちできない場面も増えてくると思います。既存体制の反発により変革が妨げられることもあるでしょう。私たちは企業のパートナーとしてパーパスに共鳴し、達成すべき成果を共通目的としたあらゆる面での支援を行える人材と経験を有しています。それにより確実な変革を実現し、人々の人生がもっと楽しく、健やかで、安全で、生産的で、意義あるものになるよう貢献していきたいと考えています。

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