公文式をご存じだろうか? 現在、日本国内における公文式学習者OB・OGは1000万人以上 *1。東大生の3人に1人が*2、そしてあの羽生善治九段も学んだという公文式。その学習法はテクニカルに受験知識を教え込むのではなく、自ら学ぶ力を培うとともに学習者の内面的成長を促すというもの。そんな“人の成長のプロ”を目指す公文教育研究会(以下、公文)が、今、全社改革に取り組んでいる。それは、真に人を大切にすることに心を傾けた、「一人ひとりが主役」の全社改革。「結局は人」「人は財産」多くの経営者がそう答えるが、さて、皆さんの会社で展開されている全社改革は、「人」に焦点を絞った形の改革になっているだろうか? 同社で全社改革に取り組む海野肇氏と河村功介氏に話を聞いた。(聞き手/アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 海津恵)
*1 公文教育研究会関係者インタビューより
*2 『なぜ、東大生の3人に1人が公文式なのか?』、おおたとしまさ著、祥伝社新書
公文の全社改革
「未来創造2025」とは

未来創造事務局 担当部長
河村功介
2000年公文教育研究会入社。北九州事務局を経て、人材開発、ブランド戦略に携わり、経済産業省に出向。その後、社長室、日本統括室を経て、18年2月より現職。日本国内の公文式教室事業の中期計画「未来創造2025」のPJリーダーを担当。
海津 御社で進めている全社改革「未来創造2025」について、その概要を教えてください。
河村 初めに弊社、公文教育研究会について簡単に説明いたします。1958年に創立し、現在日本国内では、主にフランチャイズ展開による約1万6000の教室にて「算数・数学」「英語」「国語」を中心に、個人別にちょうどの内容を自学自習形式で学ぶ「公文式」という学習サービスを提供しています。2019年10月現在、日本を含む世界57の国と地域で合計422万人に学習していただいています。
私たちが何よりも大事にしていること、それは「公文の理念」と呼ぶミッションです。
「われわれは、個々の人間に与えられている可能性を発見し、その能力を最大限に伸ばすことにより、健全にして有能な人材の育成をはかり、地球社会に貢献する」
私たちは、この「一人ひとりの能力を最大限に伸ばす」ことを、創立以来60年以上にわたって追求してきました。かつ最大の強みです。この、一人ひとりの能力を最大限に伸ばすこと、つまり「もっと子どもたちを伸ばす」ことを、これまでの延長線ではないレベルで実現し、社会に持続的に貢献し続けていくために、25年までの中期的な経営戦略として、「未来創造2025」を定めました。「もっと子どもたちを伸ばす」を合言葉に、その実現に向けて“Reborn”をキーワードに置いています。事業・組織・業務プロセス・社員の働き方などを含めた一人ひとりが主役の全社改革へのチャレンジです。
「一人ひとり」とは、子どもだけではなく、あらゆる人のことをいっています。社員もフランチャイズで教室の指導・運営を担う公文の先生(以下、指導者)も、一人ひとりが可能性を持っており、その成長の総和によって理念を実現していくことがこの改革の根底の思想です。
改革のキーワード“Reborn”には、「もっと子どもたちを伸ばす」ために「生まれ変わるほどの飛躍的な変革」を全社で目指していくという意志を込めています。社員と指導者の一人ひとりの成長の総和を改革の土台にし、その上で、時代が変わっても公文が大事にすべき不易の部分は守り続けながらも未来を見据えた公文の抜本的な変化を生み出していく、そのような改革へのチャレンジです。