●心理的安全性を理解する

 このエグゼクティブの体験は、職場の孤独に打ち勝つには、質の高いつながりがいかに重要であるかを示している。

 ミシガン大学ロススクール・オブ・ビジネスの名誉教授で、同校センター・フォー・ポジティブ・オーガニゼーションの共同創設者でもあるジェーン・ダットンのチームによれば、質の高いつながりには、共感に基づくものと相互依存に基づくものがあるという。

 理想としては、企業が出社勤務再開のポリシーと仕組みを決定する際に、この2つの要因を重視することが欠かせない。しかし、まずは組織内に心理的安全性が存在することを確認する必要がある。

 心理的安全性とは、ある環境で人間関係に関してリスクを取っても大丈夫だと感じられる状態を指す。

 この領域は、ハーバード・ビジネス・スクール教授のエイミー C. エドモンドソンがリードし、学習志向性の行動を中心に研究が重ねられてきた。たとえば、質問する、懸念を表す、間違いを認める、アイデアを提案するといった行動だ。

 リーダーやチームメンバーから「これらの行動が奨励されている」という強力なサインを得られない限り、従業員が声を上げる可能性は低い。また、同様のセーフティネットがなければ、同僚に声をかけて個人的なつながりを持とうとする可能性も低くなる。

 職場で表面的な関係を超えた絆を築こうとすると、リスクを伴う場合がある。なぜなら、真に親しい関係を構築するには、プライベートなことや感情的なことを打ち明けるなどして、自分の弱みをさらけ出す必要があるからだ。

 筆者の研究と助言活動を通じてわかったことだが、いかなるレベルやバックグラウンドの従業員も、ネガティブな感情や体験だけでなく、ポジティブな感情や体験も含めて、自分の内面世界を隠そうとすることが多い。

 ある研究で話を聞いたヘルスケア企業のエグゼクティブは、「その点、弊社の仕組みには少し問題があると思う」と語った。「実は、あまり安全な場所ではない。(中略)自分のサポートになるものや人を見つけたら、それを手放さないこと。それが無理なら隠しておけ、という感じだ」

 ある航空宇宙企業のエグゼクティブも、同じようなことを言っていた。「仕事以外のことに時間を費やすのは、タブーだと見なす文化がある。従業員同士の関係も、自然とそういうものになる」

 文化的規範や禁止行為に関するこうした認識は、職場で誰かと絆を深めようとする時に必要な、最初に自分の弱みを見せることができる心理的安全性が極めて重要であることを物語っている。