●仕事のロジスティクス
この1年、知識労働者はリモートワークの世界に飛び込んだが、おおむね、その状態が気に入ったようだ。ある研究では、パンデミック中にリモートワークを行った従業員の実に87%が、今後も少なくとも週1回はリモートワークを継続したいと思っていることが明らかになった。さらに、それが許されないならば、仕事を辞めてもいいと42%の人が考えていた。
また、パンデミック前に求められていたハードな出張スケジュールに戻ることに、気が進まない人も多いだろう。筆者の仕事仲間の一人は、実際に転職の予定を早めた。1年間のリモートワークを終えて、勤務先のコンサルティング会社が週3~5日は「外回り」をするという従来の方針に戻すと発表したためである。
たとえ、従業員の働き方や働く場所を規定する「全員共通」の新方針が会社から発表されたとしても、必ずしも最終決定として受け入れる必要はない。もともと辞めるつもりならば、例外が認められるかどうか聞いてみても損はないだろう。
もちろん断られる可能性はあるが、あなたが非常な重要な地位を占めていたり(営業職としてかなりの収益をもたらしているなど)、人材不足の分野で働いていたり(データアナリストなど)、相当の政治的資本を組織内に築いていたりする場合、あなたの要望を受け入れることにメリットがあると会社が判断することも十分に考えられる。
●プロジェクトとスキル開発
多くの従業員は、自分の仕事がルーチンワークになっている、あるいは停滞していると感じると、新しい機会を探し始める。新しい体験を控え、ほとんど家に閉じこもって1年を過ごした後であることを考えれば、ポストコロナではこの傾向がことに顕著かもしれない。
優秀なマネジャーは、従業員の新たな能力開発の機会を見つけるために常にアンテナを張り、彼らが新しいスキルを身につける方法を先回りして考える。だが、極めて優秀なマネジャーであっても、多くの場合、この1年は苦境の中で何とか持ちこたえる方法を考えることで精いっぱいだっただろう。いつもの「認知的寛容」で、従業員のニーズに気を配る余裕はなかった可能性が高い。
だからこそ、退職しようとする前に、自分の希望を主張することが大切だ。リーダーにとっては、ポストコロナの環境に組織全体が適応していくうえで、あなたには同じ職に留まり、同じ仕事に対応してもらうほうが容易であることは間違いない。つまり、いかなる変化も望んでいないと考えられる。
だが、それより望んでいないのは、あなたが完全に会社から去ることだろう。それを考えれば、たとえば、特定のエグゼクティブ向け能力開発プログラムの参加費を出してほしい、あるいは新しいビジネスチャンスを探求するイニシアチブの議長にしてほしいという頼みならば、快く受け入れてくれるだろう。