AIは正しく予測したが
マネジャーの設問が間違っていた

 ある大手電気通信会社でマーケターらが、顧客の解約を減らそうとして、どの顧客が最も解約しそうかについて、人工知能(AI)を使って判断することに決めた。AIの予測を武器に、解約リスクの高い顧客を中心にプロモーションを仕掛け、解約を思い留まらせようというのである。しかし、このリテンション(顧客維持)キャンペーンにもかかわらず、多くの顧客が解約してしまった。なぜか。

 マーケティング部門のマネジャーたちは、アルゴリズムに対して間違った質問をするという、根本的な誤りを犯していたのである。AIはきちんとした予測をしたのだが、実はマネジャーたちが解決したい真の問題に取り組んでいなかった。

 ビジネス上の意思決定にAIを利用する企業では、この種の顛末があまりにもよく見られる。2019年に『MITスローン・マネジメント・レビュー』とボストン コンサルティング グループが2500人の企業幹部を対象に実施した調査では、回答者の90%が自社はAIに投資していると答えたが、過去3年間でAI投資から事業利益を得たと述べたのはそのうちの40%に満たなかった。