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オフィス再開に向けてハイブリッドワークに関する議論が進められているが、どのようにポリシーを設定すべきかと多くのエグゼクティブが頭を抱えている。顧客の利益に反する状況は本当に起きないのか。導入すれば、優秀な従業員の離脱は止められるか。そもそも顔を合わせなければ、迅速な情報共有はできないのではないか。関係者が集まって会話をすればするほど、問題が複雑化していくのは、立場によって目的が異なり、議論の焦点も異なるからだ。本稿では、生産性、人材、組織文化に関する議論を切り分けたうえで、組織としての解決策を見出すためにどう適切なバランスを取るのがよいか、3つのステップに沿って論じる。


 この数カ月間、筆者は、どのようにオフィスを再開すべきかに悩む多くのエグゼクティブの話を聞いてきた。彼らが答えを見出そうとしている一連の問題は、相互に関連し合っている。

 たとえば、ハイブリッドワークは実際、企業利益や顧客との約束を果たす能力にどのような影響があるか。従業員はどの程度の柔軟性を望み、必要としているか。リモートで働く従業員とオフィスに出社して働く従業員を、誰が決めるべきか。オフィスで一緒に過ごす時間が減っても、組織文化を維持できるか。新しい従業員のオンボーディングをリモートで効果的に行うには、どうすればよいか。

 これらは複雑な問題であり、リーダーは先の見えない不安定で複雑な状況の中で、複数の利害関係者に配慮しながら、さまざまな基準を満たすことが求められる。だが、ハイブリッドワークの詳細を決める前に、まずはハイブリッドワークに関する会話が難しい理由を理解する必要がある。

 筆者のいうハイブリッドワークとは、同じ物理的空間にいる従業員とリモートで業務を行う従業員の両方が存在する勤務形態を意味する。シニアエグゼクティブとの会話で明らかになったのは、ハイブリッドワークに関する議論が、その判断自体の複雑さ以上に、難しい問題をはらんでいるということだ。

 リーダーが1つの会話だと思っていることは、実際には3つの会話であり、それぞれに異なる目的がある。つまり、別々のスポーツをしている3つのチームの中で勝者を決めようとしているようなものなのだ。

 ここでいう3つの会話とは、生産性、人材、そして組織文化に関するものだ。それぞれに個別の目的と議論があり、主唱者がいる。以下に3つの会話、そしてそれらに対処する方法を見ていこう。