3つの会話

 ●生産性

 従業員やチームが効果的にコラボレーションする能力に、ハイブリッドワークが影響することはわかっているが、どのように、またどの程度影響を与えるかに関しては、活発な議論が続いている。

 オフィスで並んで仕事をすれば、在宅勤務とは比べ物にならない迅速な情報伝達や協働が可能だと主張する人もいれば、従業員が自分のスケジュールを自由に自己管理し、地理的・時間的境界に制約されない場合、生産性が上がるとはいわないまでも、下がることもないと反論する人もいる。

 この会話は、組織が顧客との約束を果たすうえで、最適な勤務形態とそのバランスを判断することを目的としている。

 ●人材

 在宅勤務の壮大なる実験によって、「許される働き方」に対する従業員の期待、そして要求が変化したのは明らかだ。在宅勤務が許可されなければ、従業員の何割かは退職するという主張は、組織が大幅な柔軟性を認めなければ、今後、従業員の獲得や維持において不利に働くことを示唆している。

 最高の職場を目指して競い合うテック企業の間で、テーブルサッカーやバリスタをはじめ、オフィスの快適な設備(ジム、ドライクリーニング、鍼治療など)が急増したのを見てきたように、柔軟性が人材獲得競争の新たなフィールドになりつつあることを多くの人が主張している。

 この会話は、バーチャル化が加速し、その結果ますますグローバル化と競争が激化する人材市場で自社が成功するために、ハイブリッドワークとリモートワークに対するアプローチを取ることを目的としている。

 ●組織文化

 企業理念や指針となる価値観、規範の浸透や維持は歴史的に、新旧の従業員が直接その文化に触れ、体験することに大きく依存してきた。企業理念として明文化されているものだけでなく、真の組織文化の大半が、暗黙のうちに、あるいは意識下で認識される場合が多いことを考えると、これは当然のことだ。

 組織としての信念や規範、前提となる考え方を、テクノロジーを介して伝えることが可能なのかどうか、そのためにどうするのが最善かについては、さまざまな意見がある。

 さらに複雑なことに、私たちは現在、直接体験を通じて組織文化を身につけた上の世代と、そのような学習体験を持たない新入社員との間で分断が生じる可能性に直面している。通常の離職率(たとえば年間10%)を想定すると、少なくともコロナ禍の地域では、どの組織も従業員の10%はオフィスに出社して働いた体験がなくてもおかしくない。

 リーダーはこれについて、何をすべきか。これは失われた世代、あるいは失われた1年になるか、それとも転換点となるのか。

 この会話は、ハイブリッドワークおよびリモートワークという働き方によって、組織を組織たらしめる文化が取り返しのつかないほど損なわれたり、失われたりしないようにすることを目的としている。