ステップ2:統合的ソリューションに焦点を置く

 ここまでに全員の立場を理解するために必要な基盤ができれば、いよいよ解決モードに移行する。理想はもちろん、すべての基準と利害関係者に最適な単一の解決策に到達することだ。

 まず、試しにやってみる。案外すんなりと新たなポリシーが決まることもあるかもしれない。反対に、単一の解決策を見出すのは難しい、あるいはある程度時間をかけてもたどり着く可能性が低いことが明らかになる場合もある。

 その場合には、研究が示しているように、MESO(multiple equivalent simultaneous offers)と呼ばれる同時に複数かつ同等のオファーを行うことで、効果的にパイを広げる可能性を検討するのがよい。つまり、相互に対立する要素を組み合わせて、グループにとって総合的価値が同等になるような、いくつかの代替案を考え出すのだ。幸いなことに、すでにステップ1で、すべての基準の重要度と優先度を割り出している。

 さらに、MESOを考える過程で、より柔軟で創造的なアプローチを取らざるを得なくなる。あまりにも多くの問題が絡んでいると、MESOが複雑になる可能性があるため、なるべく細分化して考える。

 従業員をそのプロセスに集中させ、互いの立場の比較ではなく、解決策の比較に集中させる。要するに、3つの立場に対して30:30:40の割合の解決策を取るか、30:40:30の割合、または35:30:35の割合の解決策を取るかを比較させたほうが論争は少なく、全体的価値の向上につながる可能性が高い。

 ステップ3:再検討する

 ハイブリッドワークは今後も続いていくだろうが、今日のVUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)の世界についてわかっていることが1つあるとすれば、仕事を取り巻く環境は極めて複雑であり、絶えず変化しているということだ。

 したがって、最初からうまくいくと考えたり、うまくいったとしても、それがいつまでも適切なアプローチであり続けると考えたりするのは現実的ではない。

 アジャイルや同様のアプローチを支える基本原則に則れば、不安定な環境に適合する最良の方法は、再検討や再評価をあらかじめプロセスに組み入れておくことだ。プロセス自体はすでに1度実行しているため、優先順位か選択肢のいずれかに変化が生じた領域を確認するだけでよい。

 もし変化がなかった場合には、次に予定されている再検討の時期まで続行する。何らかの変化があった場合は、それによって結論が変わるかどうかを評価し、変わるならば再検討して修正する。

 再評価の間隔は、3つの会話に影響を与える環境の変動性によって異なる。すなわち、市場、人材プール、組織文化だ。これらが急速に変化している場合は、ポリシーの整合性をより頻繁に確認しなくてはならない。ハイブリッドワークへのアプローチに「有効期限」を設ければ、期限切れになったポリシーを見て驚かされたり、不愉快になったりすることもなくなるはずだ。

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 結局のところ、本稿で示した手法は、ハイブリッドワークに対する企業のアプローチがどうあるべきかを決めるものではない。実際のアプローチは、組織自体と同じくらい独自性を持つ必要があるからだ。

 それでも、プロセスベースのアプローチを採用することにより、顧客、従業員、そして企業のニーズに最適なバランスを見極める可能性を最大化できることは確かである。


"Figure Out the Right Hybrid Work Strategy for Your Company," HBR.org, June 15, 2021.