
新型コロナウイルス・ワクチンの接種が進み、従業員のオフィス復帰を計画する企業が目立ち始めた。ただし、復帰の目処が立っているわけではなく、リモートワークやハイブリッドワークの継続を望む従業員も少なくない。このまま現状の形でオフィスを維持すべきなのだろうか。本稿では、企業にとってオフィスがどのような役割を果たすかを明らかにし、オフィスのあり方を見直す際に重要な6つのポイントを提示する。
ワクチンの接種率は高まっても、企業にとっては従業員がいつ、どのようにコロナ前のオフィスの日常に戻ることができるのか、あるいはそれができるかどうかも不透明なままだ。
グーグルのデータによると、ロンドン、ニューヨーク、サンフランシスコでは、職場での活動がパンデミック前の半分程度になっている。
ロンドン商工会議所が6月にビジネスリーダー520人を対象に行った調査では、従業員の在宅勤務が可能な企業の半数が、コロナ後も従業員は週5日、在宅勤務をすると予想している。
アップルのティム・クックCEOは、今秋から週3日の従業員のオフィス復帰を計画していると発表したが、フルタイムのリモートワーク体制の継続を望む多数の要望を「意図的に無視している」という従業員からの嘆願書が提出された。
嘆願書にはこのように記されていた。「この1年は、毎日の通勤や、対面かつ共同のオフィスが必然的にもたらす課題に制約されることなく、人生で初めて最高の仕事をすることができていると感じた」
1日に出社する従業員数を減らすことを選択した企業にとって、疑問が1つある。マネジャーは、オフィスの縮小という長期的な決断をすべきなのだろうか。
ロンドンを拠点とする金融と都市計画の教授と、不動産に特化した投資マネジャーである筆者らは、数十年にわたる専門的な経験により、多くの企業にとってその答えは「イエス」であると確信している。
変化の兆しはすでにある。たとえば、ニューヨーク市ではオフィスの空室率が昨年1年間で11.3%上昇し、現在は過去27年間で最も高い水準となっている。ニューヨークを拠点とするJPモルガン・チェースやゴールドマン・サックスなどは、従業員のオフィスへの早期復帰について積極的に発言しているが、それでもこうした結果となっている。