教訓2
ヒーローのアイデアを増幅させる
2つ目のタイプのストーリーでは、ヒーローは起業家のように行動した。
彼らは大企業で働いているにもかかわらず、まったく新しいソリューションを考え出し、それを実行するための小規模なクロスファンクショナル(部門横断型)チームを結成した。そして自分たちのソリューションをテストし、失敗し、適応し、再テストするという、アジャイルな働き方を導入した。
CEOたちは、変化のスピードに対応するには、新たなレベルのアジリティ、パートナーシップ、専門知識の源泉が必要であることを学んだ。ベインの調査によると、CEOの75%が、パンデミックによって計画に根本的な変更が生じたわけではないが、戦略アジェンダを加速させる必要があったと答えている。
完璧なソリューションの追求から、スケールアップするのに「十分」なソリューションの追求へと急速にシフトした企業もある。あるCEOは「たとえ70%の能力しかなくても、既存の工場にプロトコルを早く導入する必要があった」と言う。「数時間のうちにプロトコルの70%を導入して改善することは、完璧を目指して1週間何もしないよりはるかによかった」
成功を収めた企業は、この考え方をコロナ後も継続するだろう。その目的は、組織のヒーローたちが生み出した「十分」というイノベーションの成功を増幅させ、それらのソリューションを会社全体に拡大するために必要なサポートとリソースを提供することだ。
適切なアイデアを見つけ、それを押し返すのではなく前に進めるために、上級幹部らは、アイデアをルーチンに転換することに長けたヒーローたちの専門知識とエネルギーを擁護することを学んでいる。そして、そのヒーローたちの時間と才能を、アイデアを拡大して将来のビジネスを構築することにシフトさせるのだ。
多国籍食品会社のバリラでは、組織の未来はすでにヒーローたちの手に委ねられている。組織のあらゆる方向から生まれる360度のイノベーションは、トップダウンで行われるのではなく、社内のエコシステムが責任を負う。
バリラの最高戦略責任者であるマリアパオラ・ベトルッチは、「成功するためには、各市場の優秀な若い人材に熱意をもって受け入れられる必要があった」と話す。「私たちは、彼らがCEOやグループの幹部の前でプレゼンテーションを行い、彼らから学び、彼らが学ぶのを助けることを望んでいた」
このようなボトムアップのアプローチにより、リーダーはヒーローの声を増幅し、彼らのユニークな視点を得て、次のヒーローたちに刺激を与えてビジネスの未来を切り開いていくことができる。