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オフィス再開後の働き方については、従業員それぞれに事情や希望がある一方、組織として機能するには、何をどこまで許容するかという境界線もある。チームを率いるマネジャーとしては、メンバーの意向に耳を傾けながらも、融通を利かせすぎることなく、会社が定めた範囲内で勤務形態を定めていかなくてはならない。こうした難しい会話には落とし穴があると、筆者は指摘する。さらに計画を実行するだけでなく、定期的に部下と話し合い、修正を重ねていく必要がある。本稿では、これらの会話にマネジャーが自信を持って臨むための方法を紹介する。


 読者の中には、オフィス復帰についてチームと話をすることに、不安を感じている人もいるだろう。あるいはすでにオフィスを再開し、本人同意のうえで決めた働き方が機能していないことを、部下に告げなければならない人もいるかもしれない。

 オフィス復帰に関して、従業員が安心して率直に話せる雰囲気を醸成し、建設的な対話を行うのは簡単ではない。皮肉なことに、思いやりのある優しいマネジャーであろうとして、かえって間違いを犯してしまうこともある。

 こうした話し合いの際に注意すべき落とし穴と、自信を持って会話に臨む方法をいくつか紹介しよう。

注意すべき落とし穴

 第1に、社内規則をしっかりと把握しておくことだ。まず、組織全体に関する決定事項を確認することから始める。会社は、オフィススペースを現状のまま保持するのか、あるいはフリーアドレス制を導入し、座席を予約利用する「ホテリング」を推進することでオフィススペースを削減するのか。

 最低出社日数について、会社で決められた方針はあるか。フレックスタイムは許可されているか。知らないうちに会社のガイドラインに反したくはないだろうから、チームと話す前に、まずそこから始めよう。

 リーダーの中にはすでに、オフィス復帰に関するチームメンバーの意向を聞き出した後に、会社の見解として、どのような勤務形態が望ましいかを明らかにする人が見られる。

 この過酷な経験の終わりに、実に多くのマネジャーが、チームに共感や寛容の気持ちを抱いているのを目にするのは、嬉しいことではある。だが残念なことに、あまりに融通を利かせすぎると、逆に相手にとって不利益な状況をつくったり、リーダーとして後でその取り決めを後悔したりすることになる可能性があり、どちらも好ましくない。

 これを避けるには、事前準備を行い、リーダーとして譲れないラインを確認したうえで、会話に臨むことだ。

 第2に、誰もが公平だと感じる解決法を見つけることにこだわってはいけない。仕事内容が異なれば、必要な勤務のあり方も変わるため、公平性は単純ではない。

 メンバーの役割を考慮し、それぞれの役割に合うやり方を考える。たとえば、提案書を作成するスタッフは、どこにいても大半の仕事はできるかもしれないが、管理スタッフの場合、出社しなければ、ほとんどのタスクに対応できないかもしれない。

 全員に同じ規則を適用しなければ不公平だと考えるメンバーもいれば、役割や責任を考慮に入れないほうが不公平だと考えるメンバーもいるだろう。「公平」を一つの定義でくくることはできない。リーダーは自分が用いる定義を明確にし、なぜその定義を用いるのかについて透明性を持つことだ。

 もう一つのリスクは、個々のメンバーに最適な解決策を考えようとするあまり、チーム全体で見ると、次善策になってしまうことだ。会社にとって適切であること、個人の仕事にとって最善であることに加えて、最もチームの利益にかなうやり方を考えることも重要になる。

 グループの中でメンバーの役割がどう関連し合っているか、そしてコラボレーションを支援し、仲間意識を高め、リーダーとして求めるポジティブな組織文化を醸成するには、どのようなオフィス復帰計画が最も効果的か。マネジャーとしての責任は、個人の能力を高めることだけでなく、強力なチームを構築することにもある。