●小さな習慣をつくる
人は消耗している時に誤った判断を下すことが、研究で示されている。そのため、筆者がコーチングを行っている経営者のほとんどは、毎日のセルフケアと健康のためのルーチンを実践している。
しかし、ソファでだらだら過ごしていた人が一夜のうちに熱心にジムに通うようになると考えるのは、マジカルシンキング(呪術的思考、魔術的思考)だ。そうではなく、まずは小さな習慣から始め、少しずつ大きくしていくことが大切だ。
たとえば、あるクライアントは腕立て伏せを毎日1回することを小さな習慣にした。彼女は少しずつ回数を増やし、10カ月後には1日30回になった。
別のクライアントは、毎朝最初にメールをチェックする時間を2分だけ遅らせることにした。1年後、彼女が仕事を始めるのは起床から1時間後になり、その間の時間を家族や運動、朝食に充てるようになった。毎日の小さな習慣によって、セルフケアを少しずつ増やしていけばよい。
さらに、気分を一新する機会をつくることだ。毎週、自分が喜びを感じるものをいくつか見つけて、それをいつも忍ばせておく。
たとえば、大好きなチョコレートを近くに置き、悩ましい二者択一を迫られた時にすぐに口にできるようにする。会議と会議の間に、子どもとの「ハグ休憩」の時間を設けるのもよいだろう。どのような楽しみでも、必要な時にすぐ頼れるように、ほぼ無意識に行える習慣として決めておく。
●感情をコントロールする
私たちは誰しも、感情に気づかされたのではなく、感情に反応して決断したことを後悔した経験がある。感情をコントロールするために、特に誘発されて独善的になっていると感じている時には、思考を司る脳の領域を活性化させる必要がある。
習慣を守ることで、強い感情に反応することなく、それを吸収する能力を高めることができる。平静な時に行える習慣をつくっておけば、ストレスを感じた瞬間にすぐ実践できる。
たとえば、子どもを学校に送り届ける時に、誰かと一緒に呼吸法を行い、順番に数え合うことで、相手も深呼吸できるようにする。このルーチンを十分練習をしておけば、ストレスが大きい時にも利用できる。
ほかにも、格言を唱えたり、外国語で10まで数えたり、五感(視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚)の一つに意識を集中させたりする習慣もある。冷静さを失う前に習慣を確立しておけば、脳が思考できなくなった時に具体的な方策を取ることができる。