●出張の再開は慎重に判断する
ほとんどの企業は、新型コロナウイルスの感染拡大が始まってほどなく、国外への出張を全面的に取りやめた。国内出張も減らした企業が多い。最近、より感染力の強い変異体が登場したことで、企業のリーダーは感染リスクの高い地域への出張を許可することを、これまで以上に慎重に判断すべきだ。
出張の代わりに、ビデオ会議システムを利用するよう促したほうがよいだろう。出張を減らせば、コストと時間を節約し、環境へのダメージも軽減できる。こうした点を考えると、企業のリーダーは当分の間、出張を制限し、出張費の支出を減らす可能性が高い。
●感染者が確認された場合に報告する
今後、多くの職場が新型コロナウイルスの感染を経験することになる。企業は、社内で感染者が確認された場合は包み隠さず報告すべきだ(ただし、感染した従業員のプライバシーは尊重しなくてはならない)。ワクチン接種済みの従業員は、感染者と接触した場合でも、無症状であれば隔離を求める必要はない。
●メンタルヘルスのケアを支援する
従業員のメンタルヘルス上のニーズに対応することは、今後いっそう重要性を増すだろう。コロナ禍が始まって以降、抑鬱と不安に悩まされる人の割合は増えている。2020年は、薬物の過剰摂取による死者数も過去最大に達した。友人や家族の死を経験した人も少なくない。
企業は、デジタルテクノロジーを使ったバーチャルなメンタルヘルス・ケアを従業員に提供し続けるべきだ。ただし、多くのデジタルによるメンタルヘルス・アプリの有効性はまだ限られているというエビデンスがあることは忘れてはならない。
●さまざまな措置の有効性について最新情報を入手する
最後に、新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるために、どのような措置が有効で、どのような措置の効果が乏しいのかについて、常に最新の情報を入手すべきだ。
たとえば、筆者らが5月に調査した企業の60%は、従業員が職場に入る際に検温を行っていた。近い将来、この措置を廃止するつもりだと答えた企業は、このうちの3分の1に留まっている。職場での感染を減らすうえで検温の効果は乏しいと明らかになっているにもかかわらず、である。
また、ほとんどの場合、新型コロナウイルスの感染を防ぐには通常の清掃で十分だということがわかってきている。消毒を行うのは、多くの人が触れる物体や、感染者がいた職場だけで十分なのかもしれない。企業は、安全性を高める効果がほとんどない措置をやめることで、有効な感染対策や事業活動に取り組むゆとりが増える。
新型コロナウイルス感染症は、人道上の悲劇であり、世界中の企業の事業計画も台無しにした。残念ながら、この感染症がすぐに消えてなくなることはなさそうだ。企業と労働者は、状況の変化に素早く機敏に対応し続ける必要がある。企業は警戒を緩めず、自社のニーズを満たしつつ、従業員と顧客と地域コミュニティの安全を守るために、有効性が確認されている措置を継続し、新たな措置も導入すべきだ。
"The Delta Variant: How Companies Should Respond," HBR.org, July 27, 2021.