●ソーシャル・ディスタンスを徹底する
勤務スケジュールの柔軟化やリモートワークの導入は、ソーシャル・ディスタンスの確保に役立っている。加えて、リモートワークの従業員を職場に復帰させる際は、段階的にゆっくり進めるなり、職場での勤務時間をずらすなりして、安全性に配慮すればよい。
企業は行動経済学の手法を用いて、従業員が職場でソーシャル・ディスタンスを確保するよう「ナッジ」してもよいだろう。たとえば、ミーティングルームの収容可能人数を2人までと考えるのであれば、その部屋に置く椅子を2脚だけにすればよい。
●換気を改善する
建物の換気は、ウイルスの感染状況に影響を及ぼす。空気の循環をよくすれば、職場での感染リスクを減らすことができるのだ。
換気を改善するには、かならずしも高価な改修を必要としない。換気の回数を増やしたり、既存の空気処理システムの空気濾過システムを改善したりできる場合も多いだろう。オフィスの窓を開放できるケースもあるはずだ。
一方、紫外線照射装置を導入する必要はない。室内の空気を紫外線で処理することにより、新型コロナウイルスの感染を防止するというエビデンス(科学的根拠)はほとんどないからだ。
●マスク着用を推奨あるいは義務化すべき時を定める
マスクを着用すれば、新型コロナウイルスに感染することと、(自分が感染している場合に)他人に感染させることを防ぐ効果がある。米国疾病予防管理センター(CDC)は、ワクチン未接種の人が屋内で誰かと一緒に過ごす際にマスクの着用を推奨している。
何らかの理由で免疫機能が低下している人(癌の治療を受けている人、免疫抑制剤を使用している人、臓器移植を受けた人など)は、屋内ではマスクを正しく着用すべきだ。ワクチン未接種の従業員がオフィスの一部のエリアに立ち入ることを制限している企業もある。従業員食堂や社内のスポーツジムなどでは、マスクの着用が難しいからだ。
米国では、屋内ですべての人にマスクの着用を再び義務づける自治体が増えている。健康でワクチン接種済みの人も、その地域で感染拡大が起きているときは、できれば屋内やリモート勤務中にマスクを着用したいと考えるかもしれない。
感染率が高まれば、屋内でのマスク着用を義務化する動きが広がるだろう。企業が従業員にマスク着用を義務づける場合は、米国雇用機会均等委員会(EEOC)のガイドラインに従うことにより、「障害を持つアメリカ人法」の規定に基づいて提訴されることを避けられる。
●検査を奨励する
5月の調査の時点で、新型コロナウイルスの検査を行っている企業は多くなかった(18%)。しかし、変異体のデルタが出現したことで、検査の実施を再検討する企業が増えるだろう。
抗原検査は、検査キットが入手しやすく、コストは比較的安価で、検査結果もすぐにわかる。企業は、従業員に自宅で検査を行うように指示し、無症状で陽性だった人を対象に、確定診断のための検査を手配すればよい。検査を増やすことによるコストは、会社が負担することになるだろう。
また、すべての従業員に対して、体調が悪い時は出社を控えるよう指示することも忘れてはならない。