●準備と計画、そして再度計画する
搾乳の計画は、仕事に復帰する前から始まる。まず、必要な機器を入手しよう。米国では「患者保護並びに医療費負担適正化法」(PPACA)によって、初めて出産した母親全員に搾乳器が無料で提供される。
懐事情が許せば、搾乳器をもう一つ購入して会社に置いておくことで、いつも持ち歩く必要がなくなる。市販の搾乳器は多種多様で、使い勝手も異なる。あまり予算を絞りすぎないほうがよい。搾乳は手間のかかるプロセスであり、最良の製品にはそれ相応の恩恵がある。
ラクテーション・コンサルタントに相談できる場合(自腹で雇う前に、利用している産婦人科や医療保険、勤務先の人事部門が手配してくれないか確認する)、自分に最適な搾乳器を選んだり、復職計画を立てるのを手伝ってもらったりすることを考えてもよいだろう。
それができたら、職場復帰の少なくとも2週間前から、決まった時間に搾乳を始めて、一連の手順に慣れておく。搾乳の方法を学び、周辺機器を把握し、それぞれのパーツを洗浄して保管し、所要時間を測る。細かな作業は、意外に時間がかかるものだ。
「ロジスティクスは、勘でやるものではない」と、ラクテーション・コンサルタントのトリー・ポッターは語る。「ある程度予行演習をしておくのは、とても賢明なことだ」
何度か練習して搾乳のコツをつかみ、母乳の冷凍パックをつくってみる(職場復帰した日も、子どもは何か食べる物が必要だ)。
自分の母乳量を理解することも大切だ。思ったように量が出なかったとしても、自分を責めてはいけない。誰しも自分に高い期待を抱き、その期待が現実をはるかに超えて不合理に高いことも少なくない。自分自身に寛容になろう。
●自分に与えられた権利を理解する
働く母親の権利として、職場での搾乳が法令で認められている国もある。
米国ではPPACAにより、事業者は「従業員が出産後1年間は、搾乳が必要になった時に合理的な休憩時間」を与えるとともに、「トイレ以外の場所で、同僚および一般の目に触れず、じゃまされることなく搾乳できる場所」を提供することが義務づけられている。
まず、自国の法律がどうなっているかを理解し、そのうえでそれぞれの地域でどのような権利が保証されているかを調べよう。
人事部門と連絡を取り、搾乳用スペースが会社のどこにあるかを確認し、初めての出産を終えた母親が受けられる福利厚生について聞いてみる。なかには、職場復帰に際してのアドバイスやサポートをしてくれる看護師やドゥーラ(産前産後の母親を支える専門家。医療従事者ではない)、あるいはラクテーション・コンサルタントを紹介してくれる会社もある。