食品業界におけるDDXの具体的なアプローチ

 食品業界におけるこれらの3つの変化の中でも、DDXのアプローチの観点からもっとも重要なのが、3つめの「食を含むライフスタイルをデータレベルで捉える傾向の高まり」です。こうした変化に企業が追随していくためには、「個」のデータベースのプラットフォーム化とアルゴリズムの構築が不可欠です。

 すなわち、消費者/生活者一人ひとりの嗜好やこだわり、属性などをつぶさにデータベース化し、それを分析する仕組みを構築することで、あらゆる顧客のニーズに対応した製品やサービスの提供が可能になります。

 図表4は、そうしたデータ活用のプラットフォームを「食」に関する項目に沿って具体的に示したものです。POSなどの販売データやさまざまな調査データ、SNS や Web サイトから得られる定形・不定形データも含めた多種多様な情報を、単一のデータベース上に集約・統合して分析。その結果をもとに、日々の食事のメニュー提案やレシピの共有、さらには健康管理に関する領域までをフルにカバーすることで、変化し続ける消費者/生活者のニーズにフレキシブルに対応していくというものです。

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図表4:「食」に関わる消費者/生活者個人のデータ活用のためのプラットフォーム構築が急務

 冒頭で日本企業はDDXの取り組みが遅れていると指摘しましたが、こうした中でも積極的に改革を推進している日本企業も存在します。その中から「食をデータレベルで捉える」アプローチを実践し、成果を手にしている事例をご紹介します。

消費財メーカーA社:分析CoEによるデータドリブンマーケティング

 A社では数年前、アクセンチュアの支援を通じて「分析CoE」と呼ばれる社長直轄のデータ分析組織(CoE)を起ち上げました(図表5)。この社内横断的な組織が消費者/生活者の動向やニーズの変化を迅速に捉え、その分析インサイトを営業やマーケティング部門と共有することで、データを起点とした新たな商品開発などを実現しています。

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図表5:「分析CoE」によるデータドリブンマーケティング

 本稿では多くの日本企業が抱えるデータを用いた経営変革を進める上での課題と、データ活用による経営変革の実現に向けたDDXのアプローチを中心に紹介しました。そしてデータ活用による組織改革、アナリティクス人材育成、イノベーションの創出が求められている業界例として、食品業界を取り巻く環境変化と企業の取り組みをご紹介しました。

 日本企業は今後、さらに進化するAIやデータサイエンスの技術導入や人材育成を進め、真の「データドリブン経営」の実現が求められているとアクセンチュアは考えています。

>>データ & アナリティクス(アクセンチュア サービスページ)

>>消費財・サービス(アクセンチュア サービスページ)