●同僚との関係

 物理的な距離は心理的距離を生む場合がある。同じ空間で仕事をしていれば、同僚に話しかけやすい。たとえば、財務部門のサラに嫌なことがあった日は、本人の顔を少し見るだけでわかる場合も多い。

 担当業務や所属部署が異なる従業員が言葉を交わす機会があることは、組織を機能させるうえで好ましい影響を持つ。パフォーマンスの質を高める効果もありそうだ。こうした非公式のコミュニケーションは、メールやインスタントメッセージのようなコミュニケーションツール以上に、組織の文化と機能を強化する力がある。

 リモートワークの弱点を克服する方策としては、たとえば、オフィスのドアを開放することのバーチャル版とでも呼ぶべき試みを導入してもよいだろう。

 オフィスでは、ドアが開け放たれていれば、同僚が話しかけてもよいという合図だった。その点、同僚がいまどれくらい忙しいかがわかる物理的なシグナルがなければ、話しかけることを躊躇しかねない。

 リモートワークでは、バーチャル空間でのステータスバーを活用すればよい。「チャット歓迎!」といったメッセージと一緒に緑のランプを点灯させれば、同僚たちはメッセージを送りやすくなる。

 また、メンバーの帰属意識と絆を深めるために、バーチャルリアリティを活用したバーチャルなミーティングスペースを設けてもよいだろう。そのためのテクノロジーが急成長を遂げ、企業の選択肢が増えつつある。

 ●対立の解消

 ハイブリッドワークを採用した時に持ち上がる可能性があるインクルージョン関連の問題としては、目に見えない「いじめ」の問題も挙げることができる。リモートワークの利点の一つは、オフィスでのいじめを避けやすくなることだ。しかし、人と人の摩擦全般はむしろ増える可能性がある。

 元々弱い立場に置かれていると感じていた人たちは、声を上げることを難しいと思いかねない。この点を見落とすと、チームのパフォーマンスの質が落ち込む恐れがある。複雑性が高く、高い創造性が求められる業務の場合、この点が特に問題になる。これらの業務では、アイデアの代替案を示したり、意見をぶつけ合ったりすることが極めて重要だからだ。

 すべての人の声が耳を傾けられる環境をつくるためには、心理的安全性が不可欠だ。対立が起きた時、声を上げやすく感じさせる必要があるからだ。

 その一つの方法として、健全な対立とはどのようなものかを示すことも有効である。避けて通れない厳しい会話を、批判される心配なく、生産的に行うことが可能なのだと、従業員たちに思わせなくてはならない。

 礼節を持って議論を戦わせるのは素晴らしいことだ。そうした議論が行われていれば、チームのメンバーが異なる意見を持っていても問題はないのだと知ることができる。