
上司や同僚があなたの期待を裏切ったり、クライアントから無理な要求をされたりすれば、いら立ちが募るのも無理はない。だが、「相手はよかれと思ってやったことだ」「向こうに悪意はなかったのだから」とやりすごすのは、問題の先送りにすぎない。難しい会話や行動を避けていれば、状況は悪化するばかりだ。そうした状況に陥らないようにするには、ネガティブ感情を溜め込んで爆発させてしまう前に、早い段階で対処することが欠かせない。本当に「たいしたことではない」のかを見極め、問題解決に向けて、相手と冷静に対話を始めるための方法を論じる。
同僚が期限を守らず、あなたは期待を裏切られる。上司があなたの見た目について不適切な発言をする。クライアントがチームに不合理な要求をしてくる。
そのたびに、あなたはがっかりしたり、怒ったりする。それは、自分の価値観に反する出来事が起きた時の自然な反応だ。
ところが、それについて何か言ったり、行動を起こしたりするのではなく、「たいしたことではない」と自分自身に言い聞かせてしまうのが現実だ。そうなれば、相手は同じことを2回、3回、4回と繰り返す。あなたはどうしていいかわからなくなり、激怒する。
残念なことに、こうした悪循環は十分予想できることだ。あなたがもともと、争いを避けたがるタイプの場合はなおさらだ。
たしかに、「相手がよかれと思ってやったことだ」と思い込もうとするのは、一般的にはよいことだろう。しかし往々にして、「たいしたことではない」と自分自身に言い聞かせることは(「向こうに悪意はなかったのだから」という場合もある)、難しい会話や行動を先送りにするという目先の目的に合わせた認知の歪みであり、先々もっと大きな問題になるのは確実だ。
アナの例を考えてみよう。彼女は、上司が自分のアイデアや貢献を無視しているように思えて、無下に扱われている気がした。だが、上司に悪意はなく、あまりにも忙しいために、起きていることすべてに目を配れないないのだと、アナは自分に言い聞かせた。
だが、次第に、上司の態度や行動が常に変わらないことが明らかになってきた。アナは、上司が自分の昇給や昇進の機会まで潰しているように感じ始めた。それでも、何も言わなかった。
しかし、上司の行動は明らかに大きな問題だった。なぜなら、アナは怒りを募らせ、同僚に不満をこぼすようになったからだ。最終的には、上司もアナの存在に目を向けるようになったが、それはよい理由のためではなかった。アナの態度が目に見えてネガティブになり、仕事のパフォーマンスも客観的に著しく低下したのだ。
まさに、こうした状況こそが問題なのだ。早い段階で物事に対処しておかないと、ネガティブ感情を溜め込み、ひどく腹が立って、最後には自分のことを不当に扱う相手と同じ部屋にいることさえ嫌になる。相手を信頼したり、好意的に感じたりするなど、もってのほかだ。
ひどくなれば、どこかの時点で堪忍袋の緒が切れてしまうかもしれない。そうなれば何を言っても、状況はさらに悪化するしかなくなる可能性が非常に高い。