マテオとマーカスの例を紹介しよう。2人の仕事は、会社の上層部の意思決定をサポートする、さまざまな社内調査報告書を作成することだった。

 マテオは、期限よりもずっと早く報告書を書き上げることを好んでいた。そうすることで、同僚に目を通してもらう時間の余裕が生まれ、改善点を指摘してもらうことで報告書の完成度を高められるからだ。

 対照的に、マーカスはいつも期限間際になって報告書を提出していた。そのため、同僚がそこに何かしらのインプットを加える時間の余裕はなかった。

 マテオはマーカスに対して、「もっと早く仕事終わらせてほしい」というサインをさりげなく出したことがあった。マーカスが自分の意図に気づいてくれることを期待したが、何も変化は起きなかった。

 ある時、提出した報告書に間違いが見つかり、彼らのチームは上司から厳しい叱責を受けた。事前に見直す時間があれば、容易に気づいたはずのミスだとマテオは思った。

 上司に叱責された後、マテオは廊下でマーカスを待ち伏せして、本人に「自分勝手で、何よりもプロフェッショナルとしての意識が足りない」と怒りをぶつけた。するとマーカスは、マテオは柔軟性がないと言い返してしてきた。そして、「いまのところ、自分のやり方を変えるつもりはないから、それに慣れることだ」と言うと、いら立った様子で立ち去った。

 どうすれば、こうした状況を避けられるのだろうか。

 ●「たいしたことではない」を、行動を起こすための手がかりにする

 自分が「アサーション」(適切な自己主張)をできているか、よく考えてみてほしい。何かネガティブ感情反応を引き起こす出来事があった時、あなたは「たいしたことではない」と自分に言い聞かせているにすぎないのではないか。

 そのことに気づけば、自分がネガティブ感情を引き起こした原因に対処するのではなく、それを避ける口実として「たいしたことではない」というフレーズを使っていることを認めるのは難しくないはずだ。問題を避けているからこそ、同じことが何度も起きて、そのたびにネガティブ感情が強くなっている。

 そのため、「たいしたことではない」と自分に言い聞かせそうになったら、それは何かを言うべきサインだと考えよう。著書Choosing Courageでも詳しく説明している通り、声を上げることは難しいかもしれないが、問題を真に解決するにはそれしか方法はない。

 その問題は、たしかに「たいしたことではない」のかもしれない。その場合には、冷静に会話すれば十分だろう。

 同じように、相手が悪意を持っていたわけでなければ、あなたが悩んだり、困ったりしている相手の行動について、ていねいに敬意を持って伝えることで、相手は激怒することなく対処してくれるはずだ。善意の人は小さな間違いを犯した時、ネガティブに反応することなく、こちらの言うことに耳を傾けてくれるものだ。